これは2時間半に及ぶ長編である。(こんな地味な映画なのに)タイトル通り山を舞台にしたドラマ。壮大な風景を背景にした映画なのだけど、何故かスタンダード・サイズ。シネマスコープの大画面で雄大な自然を見せるべきところなのに。もちろんそこには作り手の意図がある。
山を介したふたりの男の友情を淡々と描く。12歳の出会いからの日々。31歳の再会。その後、父の意志を受け止め山小屋を建てる為にふたりで過ごした時間が描かれる。やがて距離を取りながらも、離れることなく、過ごす時間につながる。そして、いきなりの死まで。
20年以上の歳月を描くのだから、この2時間半は妥当かもしれないが、その時間がかなり長く感じられた。体感時間は4時間くらい。だけど退屈したわけではない。いろんなことが、丁寧に描かれていて、思った以上に長さを感じさせたのだ。それは人生の長さを思わせる。
それだけに、あのあっけない死には驚く。あんな風に死ぬこともあるのか、と。現実ならともかく映画なのにあれはないよ、とも思う。感動の友情物語のラストにふさわしくない。だが、敢えてそんな作り方をしたのかもしれない。
序盤の子ども時代の描写が素敵だ。都会育ちのピエトロと、山から出たことがないブルーノ。ふたりの最高の夏時間の日々。そして、それは父と3人で氷河を見に行く前半のクライマックスにつながる。まさかの展開がいい。それは些細なことにも見える。だが、ピエトロには大きな傷みだ。その後、父を介してふたりは離れることになる。
環境の違い、予期せぬ別れ。空白の時代。青年期のすれ違い。やがて30代になり、父の死後の再会からお話は本格的にスタートする。山小屋を共同で作り上げたふたりがそれぞれの立ち位置を決める。だが、揺れる心はある。なかなか上手くはいかないことも。牧場経営の困難さ。何をすべきかわからないまま旅する日々。挫折に至るまでのドラマと、ネパールでの暮らしを並行させて描く。お互い別々の道を歩いていく。
スタンダードという狭いスクリーン・サイズは彼らのままならない心の狭さにつながる。雄大な自然の中にあつてもままならないことだらけだ。いいとかわるいとか、わからないことばかり。でもそんな中で僕たちも生きる。生きていく。