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映画・演劇のレビュー

劇団☆春夏秋冬『艶姿河内六人娘』

2020-02-29 10:31:08 | 演劇


これは「大阪☆春夏秋冬」の6人による劇団。だからお話も当然6人の女の子たちを中心に据えたお芝居になる。彼女たちが自分たちの夢を叶えるために戦う姿を描く活劇だ。少女たちの願いをまわりの大人たちが支えて大きな舞台を作り上げるまでを描く。

年に一度の祭りで踊りたい、というささやかな願いが始まりだ。大坂夏の陣から2年、荒れ果てた大坂。舞台は河内の小さな村、そこで行われるはずだったささやかな祭り。この子たちの小さな願い。だがそれはやがて徳川を揺るがすムーブメントを巻き起こすことになる。とても面白い設定と展開を用意した。
なのに、この壮大なお話をなぜか中途半端なところで小さくまとめ上げてしまった。なんだかとてもそれが残念なのだ。これは小さなお話ではない。最後にいきなりドキドキするほどのスケールにならないとドラマには説得力は生まれない。

これはまず、「大坂☆春夏秋冬」の6人組を輝かせるためのお芝居なのだろうが,彼女たちをちゃんと光らせるためにはお話としての説得力は絶対に必要だ。観客をこの嘘のようなお話にきちんと乗せられなくてはならない。そうでなくては彼女たちのファン以外の観客の心を捉えることはできない。ただのお子様ランチではなく,大人の芝居として見せて欲しい。充分可能な設定とお話の仕掛けを用意した。

なのに、台本の詰めの甘さ。それだけが悔やまれる。荒唐無稽なお話へとエスカレートさせていくラストの展開は上手いと思うのだ。廃墟と化した大阪城でのダンスイベントに何千人もの人たちが集まり、幕府を震撼させるというお話は実に痛快だ。河内の小さな村祭りのはずが、気がつけばとんでもないイベントになる。そこで彼女たちは堂々と歌い踊る。それだけにラストのライブシーンはもっと盛大にして欲しいし、幕府側の対応と困惑もしっかりと描いて欲しかった。そうすることで、彼らにひと泡吹かせるというこのラストに用意されたどんでん返しも生きてくる。

彼女たちの夢を実現させてあげたいというみんなの想いがちゃんと伝わったなら、これは凄い舞台になったかも知れない。彼女たちは、自分たちがやりたいことをやりきるための、ここにいる。ただそれだけ。でも、それで十分だ。そんな熱い想いが伝わればいい。ただ、踊りたい。それだけでいい。

これは「それだけ」を実現させる可能性のあるお話だと思うのだ。それだけに実に残念だ。

 


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