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映画・演劇のレビュー

『僕が結婚を決めたワケ』

2011-10-08 19:58:32 | 映画
ロン・ハワードの新作である。宣伝のイメージやあら筋から、絶対にロマンチック・コメディーなのだろう、と思ったのだが、そうではない。コメディータッチの語り口ではあるが、映画自体は必ずしもそうではない。映画は2組のカップルを主人公のして彼らの顛末を描くのだが、なんだか後味はよくない。シリアスではないのだが、コメディーとしてはいささか重い。なんとも中途半端な映画なのだ。友人夫妻に勧められ結婚に踏ん切りを付ける主人公だったが、その友人の奥さんが不倫している現場を目撃し、ショックを受ける。彼らの姿が彼には理想だったのに。そこで、なんとかして、2人をもう一度上手くいかせようと努力するのだが、その行為が周囲に不審を抱かせる。

ロン・ハワードはどうして、こんな映画を撮ったのだろうか。しかも、もっと口当たりにいい映画にしたならそれなりに楽しめたかもしれないのに、どうしてこんなにも暗い映画にしたのか。ウィノラ・ライダー演じる友人の妻をどんどん酷い女にしていくのは、どうしてか。二人の関係を泥沼に落とし込んで、主人公に結婚なんか、最悪だとでも、思わせたかったのか。それなら、ラストは結婚をしない、という選択をさせるはずだろう。だが、このタイトルである。まぁ、これは日本語タイトルで、原題は『ジレンマ』なのだが、それでも最後は、すべてを丸く収めるのだから、本来これはシチュエーション・コメディーなのだ。ならばこれではバランスを著しく欠く。この居心地の悪さはわざとなのかもしれないが、なんだか見ていて、しんどい。

主人公の彼の結婚の理由よりも、ロン・ハワードがこれをここまで、しんどい映画にしたことの理由の方が知りたい。まぁ、そこを明確にすれば後者の理由もはっきりするのだろうが、どちらも曖昧なままだ。だから、後味が悪いのである。取りあえずは全て元の鞘に収まっている。友情にもひびが入らないし、事業も成功する。結婚も決まる。夫婦仲ももとに戻る。めでたしめでたしである。だが、そのすべてがこんなにも嘘臭い映画はない。だから、映画がつまらないというわけではない。反対にこの居心地の悪さのリアリティーがこの映画のねらいなのだろう。そういう意味ではこの映画は成功しているのだが、なんだか納得はいかない。


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