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映画・演劇のレビュー

桂望実『恋愛検定』

2011-12-11 20:23:09 | その他
 桂望実の小説なのに、つまらない。恋愛検定なんていう曖昧な設定がダメだったのだろう。もっと方向性が明確になるような設定と、それによってドラマがしっかりと動いていくような作り方が必要なのだ。これって、伊坂幸太郎の『死神の精度』と同じパターンである。しかし、何もしない恋愛の神さまというのは、同じように何もしない死神以上にたちが悪い。神さま自体の設定は悪くはない。酒飲みだったり、上司の命令には逆らえないサラリーマンだったり、結構人間臭いのだが、しかも、それが章を追うごとに微妙に変わっていくとか、芸は細かいのだが、大事なことはそんなことにはない。描かれる恋愛の一つ一つがどれだけ魅力的かいなか、なのだ。今回彼女は初めて恋愛小説にチャレンジしたらしい。だが、こういう変化球しかできなかったようだ。もうその時点で、逃げてるからダメです。

 だいたい4級からマイスターまで、6つのコースの差があまりよくわからないし、そこにはなんの意味もない、というのは、ちょっとまずいのではないか。恋愛の達人が幸福になる、というわけでもない。でも、達人であるはずの、上級挑戦者と、ビギナーでしかない下のランクへのチャレンジャーではどう違うのか、そこをちゃんと差別化できなくては、意味ない。

 じゃぁ、その違いって何? 描き切れてない。だから、ダメ。検定なんてものに、もともと意味なんかないのだから、と居直ってしまったら、それまでのことなのかもしれないけど、この小説にはそんな居直りもない。軽い読み物としては悪くはないのかもしれないが、あの傑作『ボーイズ・ビー』の作者の新作がこれでは、僕はちょっと悲しい。



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