いつも挑発的な小説を連打してくる羽田圭介の新作は究極のミニマム生活。とことん物を捨てる。その果てには何があるのか。タイトルが『滅私』ではなく『滅死」というところが示唆するものが答えなのだが、終盤でゴミ屋敷と化した空間で心安らぐところから、正反対が結局同じところに行きつくのか、と思わせて、もちろんそんな単純なことではないのも自明のことで、私を失くすことで死を迎える。断捨離を推奨するのではない。ものへの執着は愚かだが、ものは生活を豊かにする。バランスが大事なのだろうが、それって難しい。と、ここまで書いてタイトルは『滅死』ではなく『滅私』だったことに気づく。あれっと、思って本を見たら『滅私』とある。あちゃぁ、と思う。相変わらずいいかげんだな、と笑ってしまう。思い込みで私を失い死に至るお話だと勘違いしていたわけだが、あながちそれは間違いでもないかも、と思う。
極端を追求するから、そこからいろんなものが見えてくる。こういう側面から生き方を追求するとどこにたどりつくのか。彼が捨ててきたもの。人だって切り捨ててきた。そこから何が見えるのだろうか。
あっという間に読み終えた。この主人公は、私利私欲のまみれているんじゃないか、と思う。だから、彼は滅びてしまうのだろう。極端から極端へ。自戒しようと思う。僕はいつもゼロは100かを求めてしまう。でも、世の中はそんな単純なものではない。心を病んでしまう前に、することがある。そんなことをこの本を読みながら考えていた。ここから見えてくることを自分なりにしっかり見つめていこう、そんな気にさせれれる小説だ。