映画にもなった『ツナグ』の続編である。このパターンならいくらでも連作は可能だ。だから、もう読まなくてもわかる、って気がしてしばらく読むことを躊躇していたけど、読み始めると止まらない。しかも、ひとつひとつのエピソードが前作以上に深まっていてそれにも驚く。安易な二番煎じと高をくくっていた自分を恥じる。作者は確かな覚悟をもってこの第2作目に挑んだことが伝わってくる力作だ。「ツナグ」というアイデアだけで、お話を作るのではなく、その仕掛けがあるから描くことのできる大事なものとは何なのかをきちんと考えたうえでそれぞれのエピソードは綴られてある。だから、愛おしい。
ツナグとなった歩美は、社会人となり働きながらも、自分の使命を全うしていく。ひとりひとりの想いをちゃんと届けるためのお手伝いをする、という基本を忘れない。そんなの当り前ではないか、と思うけど、人間はなかなかそうはいかない。そんな当たり前のことが日頃の積み重ねの中でおざなりになる。
最初のエピソードで彼が登場しないことに、「えっ?」と思う。そんな不審感はすぐに拭い去られるけど、敢えてあのエピソードから始めたところに、作者の意気込みを感じる。歩美は主人公ではない。彼は「使者=ツナグ」でしかない、という当たり前のことをまず最初に感じさせられることになる。その確認作業の後で、それぞれのエピソードが綴られる。いろんなところが実に手堅く丁寧に作られている。
死者と1日限り再会する。(今回は、初めて会う、というパターンもあるが)思い残したことをぶつけるだけではなく、今の自分が生きていくために必要なものが何なのかを知る。たった一夜だけど、その時間が生きる意味の確認になる。死者は彼らに教えてくれる。ここに立ち止まるのではなく、この先へと歩いていくことの意味を。5つのエピソードを通して僕たちもまた、ちゃんとこの先へと生きていこうとと思わされる。誰があなたを支えているのかを教えられる。ここにはもういない人が、あなたのすぐそばに、確かにいる。
後半、歩美のツナグとしての仕事ではなく、彼の実人生のお話が前面に出てくるという構成もいい。そこからはちゃんと彼を主人公にするという構成だ。この死者との交流を描くお話が、そこからは生者のドラマになり、彼が自分の人生において何が必要なのかをしっかり見つめていくラストにつながる。