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映画・演劇のレビュー

加納朋子『七人の敵がいる』

2014-10-09 19:37:04 | その他
 子供が小学生になり、仕方なく、PTAの役員になる。そこで生じる様々な戦い。すさまじいバトルの連続技で、しかも、自分から敵を作るようなバカな対応ばかりしてしまうし。でも、持ち前のガッツで「ブルドーザー」(会社でのあだ名)のように乗り越えていくし。

  この主人公と一緒に不条理の世界にようこそ。

 6年に及ぶ7つのバトル。(7話構成。7つのエピソードからなる短編連作スタイルの長編)ここに描かれたことが実は、簡単ではないことなんか、経験したことのない人にはわからないだろうが、ちょっとでも、かすったことのある人なら、それだけで、わかることだろう。読みながら、学童保育の会長(1年目は副会長)をした2年間を思い出した。というか、子供を保育所に入れて、その送り迎えをした日々、PTAの様々な行事を、仕事があるからという理由で、妻に押しつけて、でも、仕方なくした学童のことで、毎日憂鬱になった日々。あれやこれやがオーバーラップした。

 同じ境遇の女たち、義母、男、夫、わが子、先生、PTAの会長。これが彼女が遭遇する7人の敵だ。7つのエピソードはそれぞれ心当たりがあることばかりだ。それらをなんとかして乗り超えていく。まるで、ロールプレイングゲームみたい。ラスボスの会長とは、エンディングで、もうひと勝負ある。

 読みながら、これはただのPTA奮戦記ではないことに、気づく。この世界はこんなふうに次から次へとピンチの連続だ。それをなんとか綱渡りで乗り切っていく。今、痴呆になり始めた母を抱えての新しい戦いに突入している。子育てが終わっても戦いは続く。もちろん、仕事もある。だが、この本を読んでいると、大丈夫だ、と思える。ここからは、そんな元気をもらえる。


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