『マトリックス』のウォシャウスキー姉弟の最新作である。「この春、これを見ずして、何を見る?」と、それくらいにワクワクする。今回は、どんな思いもしない世界を展開してくれるのか。楽しみでならない。彼らなら想像を絶する冒険を見せてくれるはずだ。僕たちのイマジネーションの先の先へと連れて行ってくれるはず。前作『クラウドアトラス』も、奇想天外なお話を壮大なスケールで見せてくれた。並行して描かれる6つのお話からなる壮大なドラマで、難解さなんて気にならない。わかるかわからないかではなく、どう感じるかだ。ストーリーには重きを置かない。でも、彼らのストーリーはおもしろい。わけのわからない世界であっても、そこにいて、生きていると、だんだん馴染んでくる。世界観がちゃんと確立しているからだ。
だが、今回、初めてその世界に違和感を感じた。なんだかつまらないのだ。オリジナル作品らしいが、どこかで見たようなイメージの寄せ集め。それを古典的と褒めそやすことは出来ない。どこにも驚きがないことが驚きだ。だんだん退屈してくる始末である。斬新なビジュアルもない。ありきたりなお話だ。こういうスペースオペラなら、今までどれだけあったことだろう。
地球で生まれた異星人のお姫さまが、自分の誕生の秘密を知り、プリンセスとして宇宙を統治することになるまでのお話。手垢についたお話だ。ウォシャウスキー姉弟はどうしてこんなつまらないお話に、ここまで入れ込んだのか。わけがわからない。
ミラ・クニスのお姫さまもまるで魅力的ではないし、彼女を救いだす身分違いの兵士とのラブストーリーもいかにもな感じ。それが上手く収まれば楽しめるのだが、そうはいかない。それより何よりここで提示される世界観。あまりに退屈で見ながら居眠りしてしまいそうになった。
笑える映画を目指したわけではないけど、家政婦をしている彼女が実はお姫さまだったというシンデレラ・ストーリーも生かしきれてない。そのためにはこれはもっと夢見るような映画でなくてはならない。今の時代、当然ビジュアルにはもうどんなものを見せられようとも驚かないし、ここに提示される最新技術、それには何ら驚きはない。そんなことよりも、これがここまでつまらない映画であるという事実の方が、最大の驚きである。