ひきこもりの男が、自分の作った世界の外へと出て行こうとするお話。最初はしかたない状況からだが、彼は自分で自分の世界を壊し、ここから出て行く。
主人公の蔦彦(上田展壽)は自分の周囲の人たちと酷似した精巧なフィギュアを作り、その人形を自由に操り、自分の空想の世界に浸る。自分の分身であるライオンと2人で暮らしている。そこに両親の離婚から後、別に住んでいた姉と弟が両親の死によって、この家に戻ってくる。話はそこから始まる。昼間はアルバイトをしながら、取り敢えずは普通の生活をしていた彼だが、2人の介入により生活のバランスを崩してしまう。
ストーリー自体はシンプルだが、複雑な人間関係の中で、現実と空想が交錯していき、しかも彼の中の現実(それって妄想だが)と周囲の人の現実にも落差が生じ、着地点が見えない芝居となっている。自分ひとりで暮らしていた家に侵入してきた姉と弟はわがもの顔に振舞うが、彼らに対して何ひとつ言えないまま、自分の部屋にこもってしまう。この部屋では彼は王様だ。すべてが彼の思いのまま進行する。そんなこと当たりまえのことだ。ここには彼しかいないのだから。だが、彼がこの部屋に人を招くことで、彼の中でのバランスが徐々に壊れていく。
ラストでは、彼が夢を見ている間に、彼が居ないまま(そんなこと誰も気にも止めずに)時間は流れていく様が描かれる。その間、ライオンが彼の代わりに彼のフリをして生活する。そのことにすら誰も気付かない。(それって、彼のことなんか、誰も見ていないということだ!)
いろんなところが、ほつれていたり、裂け目が出来ていたりする。そこから話はさまざまな方向にねじれていく。作、演出のサリngROCKは、壊れた心を持つ男がいかに世界とかかわっていくのかをいつものように斬新なイメージを駆使して見せる。奇抜な衣装を身に纏った見るからに危なそうな人たち(壊れているのは蔦彦だけではなく、この芝居に出てくる人たちはみんなぶっ壊れている)が、それでも一応普通の生活を送っている様を見せる。そんな中、蔦彦はこもりながら生きている。この芝居の中で彼だけが唯一まともな人間に見えないでもない。
眠りから目覚めた彼がドアの向こうへと消えていくラストシーンは、とても感動的だ。
主人公の蔦彦(上田展壽)は自分の周囲の人たちと酷似した精巧なフィギュアを作り、その人形を自由に操り、自分の空想の世界に浸る。自分の分身であるライオンと2人で暮らしている。そこに両親の離婚から後、別に住んでいた姉と弟が両親の死によって、この家に戻ってくる。話はそこから始まる。昼間はアルバイトをしながら、取り敢えずは普通の生活をしていた彼だが、2人の介入により生活のバランスを崩してしまう。
ストーリー自体はシンプルだが、複雑な人間関係の中で、現実と空想が交錯していき、しかも彼の中の現実(それって妄想だが)と周囲の人の現実にも落差が生じ、着地点が見えない芝居となっている。自分ひとりで暮らしていた家に侵入してきた姉と弟はわがもの顔に振舞うが、彼らに対して何ひとつ言えないまま、自分の部屋にこもってしまう。この部屋では彼は王様だ。すべてが彼の思いのまま進行する。そんなこと当たりまえのことだ。ここには彼しかいないのだから。だが、彼がこの部屋に人を招くことで、彼の中でのバランスが徐々に壊れていく。
ラストでは、彼が夢を見ている間に、彼が居ないまま(そんなこと誰も気にも止めずに)時間は流れていく様が描かれる。その間、ライオンが彼の代わりに彼のフリをして生活する。そのことにすら誰も気付かない。(それって、彼のことなんか、誰も見ていないということだ!)
いろんなところが、ほつれていたり、裂け目が出来ていたりする。そこから話はさまざまな方向にねじれていく。作、演出のサリngROCKは、壊れた心を持つ男がいかに世界とかかわっていくのかをいつものように斬新なイメージを駆使して見せる。奇抜な衣装を身に纏った見るからに危なそうな人たち(壊れているのは蔦彦だけではなく、この芝居に出てくる人たちはみんなぶっ壊れている)が、それでも一応普通の生活を送っている様を見せる。そんな中、蔦彦はこもりながら生きている。この芝居の中で彼だけが唯一まともな人間に見えないでもない。
眠りから目覚めた彼がドアの向こうへと消えていくラストシーンは、とても感動的だ。