パトリス・ルコントは本当に上手い。彼が作る映画にはいつも感心させられ続けてきたが、いまさらながら凄いと言わざる得ない。なにをいまさら、とは言わない。いまさらながら感心させるのだ。
『髪結いの亭主』が初めて日本で公開された時の衝撃は忘れられない。今はなき三越劇場で見た。こんなすごい映画はない、と興奮した。しばらく立てなかった。あの後、彼の映画は続々公開されるようになったが、あの衝撃を上回ることはない。当然のことだ。あれは最高の映画で、あれを超える映画は世界には存在しないからだ。もちろんこの世の中にはすばらしい映画なら星の数ほどある。あの映画以上の作品もたくさんあるだろう。だが、問題は比較ではない。相対評価はいらない。絶対評価にしか意味はない。
今回の新作を見ながら、ルコントもなんだか説明くさいな、なんて思った。これなら『列車を待つ男』のほうがよかった、なんて思いながら見ていた。だが、このちょっと図式的であざとい映画が、だんだんそれすら計算の上の表現だと気付く。今回のル・コントはわざとわかりやすい展開をする。まるでおとぎ話でも語るように、である。いかにも、な筋立てをして、そこから普遍的な寓話を引き出す。『星の王子さま』の引用もそうである。2人の男の出会い、そして、彼らがお互いの存在に気付く。図式の中から、普遍が導かれ、それが今まで見たことのないような本質につながる。友情のお話なんてこの世の中に五万とある。どれも嘘ではない。だが、ほんとうの友情って何だ、と問われればなかなか答えられない。ほんとうの友情を描いた作品を1つあげよ、なんて言われたなら困るように。まぁ、それは『走れメロス』でもいいのだが、大声でそう言うのは、なんだか恥ずかしい。たくさんありすぎて1本には絞れない、とか言ってお茶を濁してしまいそうだ。まぁ、それでいいのだが。
さて、ルコントのこの映画である。最初に「君には友だちはいない」と言われた男が、反論するが、冷静に考えた時、やはり自分には友だちと呼べる人が誰もいないという事実に愕然とする。そこから始まる友だち探しが描かれるのだが、一緒に友だちを探してくれたタクシー運転手が友だちだと気付く、というよくある話になるのだが、そこはル・コントである、単純ではない。
おとぎ話の定石を踏まえながらも、そこから大きく逸脱していく。もっと大きなお話へと逸れるのだ。あれっ、と思ううちに意外な展開に驚く。主人公の古物商の男(例によって、ダニエル・オートゥイユ)が自分の愚かさに気付くところでは終わらない。主人公がもうひとりの運転手のほうにスライドしていく。終盤になって彼ら2人を並行して描く。ここからはルコントの独断場だ。見事としか言いようがない。
エピローグとして用意された「1年後」のラストの再会シーンがすばらしい。お金ではないなんて、誰もが言うことだが、お金がなかったなら人は生きていけない。そんなことも誰でも知っている。だが、その上でじゃぁ、どうすればよいのか、大事なのはそこなのだ。すばらしいラストである。自分の目で確めて欲しい。
『髪結いの亭主』が初めて日本で公開された時の衝撃は忘れられない。今はなき三越劇場で見た。こんなすごい映画はない、と興奮した。しばらく立てなかった。あの後、彼の映画は続々公開されるようになったが、あの衝撃を上回ることはない。当然のことだ。あれは最高の映画で、あれを超える映画は世界には存在しないからだ。もちろんこの世の中にはすばらしい映画なら星の数ほどある。あの映画以上の作品もたくさんあるだろう。だが、問題は比較ではない。相対評価はいらない。絶対評価にしか意味はない。
今回の新作を見ながら、ルコントもなんだか説明くさいな、なんて思った。これなら『列車を待つ男』のほうがよかった、なんて思いながら見ていた。だが、このちょっと図式的であざとい映画が、だんだんそれすら計算の上の表現だと気付く。今回のル・コントはわざとわかりやすい展開をする。まるでおとぎ話でも語るように、である。いかにも、な筋立てをして、そこから普遍的な寓話を引き出す。『星の王子さま』の引用もそうである。2人の男の出会い、そして、彼らがお互いの存在に気付く。図式の中から、普遍が導かれ、それが今まで見たことのないような本質につながる。友情のお話なんてこの世の中に五万とある。どれも嘘ではない。だが、ほんとうの友情って何だ、と問われればなかなか答えられない。ほんとうの友情を描いた作品を1つあげよ、なんて言われたなら困るように。まぁ、それは『走れメロス』でもいいのだが、大声でそう言うのは、なんだか恥ずかしい。たくさんありすぎて1本には絞れない、とか言ってお茶を濁してしまいそうだ。まぁ、それでいいのだが。
さて、ルコントのこの映画である。最初に「君には友だちはいない」と言われた男が、反論するが、冷静に考えた時、やはり自分には友だちと呼べる人が誰もいないという事実に愕然とする。そこから始まる友だち探しが描かれるのだが、一緒に友だちを探してくれたタクシー運転手が友だちだと気付く、というよくある話になるのだが、そこはル・コントである、単純ではない。
おとぎ話の定石を踏まえながらも、そこから大きく逸脱していく。もっと大きなお話へと逸れるのだ。あれっ、と思ううちに意外な展開に驚く。主人公の古物商の男(例によって、ダニエル・オートゥイユ)が自分の愚かさに気付くところでは終わらない。主人公がもうひとりの運転手のほうにスライドしていく。終盤になって彼ら2人を並行して描く。ここからはルコントの独断場だ。見事としか言いようがない。
エピローグとして用意された「1年後」のラストの再会シーンがすばらしい。お金ではないなんて、誰もが言うことだが、お金がなかったなら人は生きていけない。そんなことも誰でも知っている。だが、その上でじゃぁ、どうすればよいのか、大事なのはそこなのだ。すばらしいラストである。自分の目で確めて欲しい。