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映画・演劇のレビュー

『マルケータ・ラザロヴァー』

2022-07-28 11:13:36 | 映画

なんと55年前に作られたチェコ映画だ。モノクロ、シネマスコープのスクリーンに展開する壮大な歴史絵巻は、なんだかよくわからない話で、見ていて、これは一体何なのか、どんな話なのかすら、摑みきれない。これには困った。まるで僕にはお話すらわからないのだ。主人公たちの顔の区別もつかないし。誰と誰がどこで何してどうなっているのか、わからないまま、話はどんどん進んでいく。さすがに参った。しかも映画は2時間46分もある。焦った。チェコの人たちにとってはこのお話は自明のことなのだろう。でも、日本人の僕には何が何だか。

だから必死で人間関係を理解しようと努めた。でも、映画自体がそこをちゃんと説明する気がないのだ。やばいな、と思う。途中で退屈して寝てしまうのではないか、とも思う。セリフはなんだかボイスオーバーみたいで、誰がしゃべっているのかもよくわからないみたいだ。しかもしゃべっている内容も字幕をちゃんと追うけど、なんだかわかったようで、わかりづらい。頭に入ってこないのだ。

どうしてこんな映画を見てしまったのだろうか、と悲しくなる。「チェコ映画史上最高傑作、55年の歳月を経て日本初劇場公開」なんて惹句に踊らされたのが間違いだったのか。「『アンドレイ・ルブリョフ』『七人の侍』に並び評され」なんてことばに騙されたのか。だが、見ていて徐々に諦めからか、もうどうでもいいや、と思い始めたところから、気分が楽になってくる。

わけはわからないけど、なんだか凄いし、それを目撃していけばいいんや、と思い、スクリーンに集中する。わけなんかわからんでもいい。この迫力と、過剰で過激なドラマに圧倒されるだけでいい。目の前で起きている現実を受け止めるだけでいい。宗教の対立、野生と本能、愛と暴力。混沌とする激しい戦いの繰り返しに身をゆだねる。ラストのマルケータの決断まで、この壮大なオペラの目撃者になったこと。それだけでなんだか納得した。なんかわからないけど、凄かった。今はそれだけで十分だ(という事にしておこう)。

 


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