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映画・演劇のレビュー

極東退屈道場『サブウェイ』 

2013-03-22 20:32:14 | 演劇
 今回は全国縦断ツアーである。大阪を皮切りにして全国5か所を巡る。地下鉄のある都市で公演していくそうだ。3度目の『サブウェイ』である。どんどん進化していく。よりシンプルで、スタイリッシュな作品になる。衣装もよくなった。ダンスとの融合も、もう取ってつけたようにはならない。とても自然に見える。それは繰り返すことでどんどん洗練されてきたこともある。だが、林慎一郎さんがこの作品世界をどんどん深化させていったからだ。細部はかなり変更されている。台本自身もかなりの変更がある。でも、本質は一切変わらない。作者の意図はぶれない。

 最初の驚きはもうない。だってこの短期間でもう3度目の再演なのだ。だが、まるで退屈させない。それどころか、3度目なのに、とても新鮮なのだ。安心して見ていられる、なんていうのでもない。かなりドキドキさせられる。テンポはよくなっている。そして、とてもスマートだ。

 7日間。8人のキャスト。それぞれの独白。地下鉄を巡る様々なスケッチ。膨大なエピソードの集積。ここに描かれたものはその一端でしかない、と思わせる。そんなたくさんの人々を飲み込んで、都会の地下を走る。

 中国人(?)の映画監督による日本の地下鉄を描くドキュメンタリー映画。地下鉄の謎。不思議な音がそこにはある。その音は人を洗脳する。そんな地下鉄に流れるノイズを巡るお話を根幹に持ちながらも、そこには囚われない。自由に作品世界は広がる。もちろんそれは地下鉄世界だが。これはあやしい中国人監督の妄想だと解釈してもいい。だが、そんなエピソードも、実は、この芝居を形作る一要素でしかない。

 もっと大きなものがこの作品を覆っている。だれも知らない不思議な世界へ、ようこそ。林慎一郎さんが描く世界は理屈で理解出来るものではない。自分の眼で目撃して初めてわかる。でも、説明は難しい。これは麻薬のような芝居なのだ。だから、何度でも見たくなる。これを頭で理解する必要はない。身体で感じる芝居なのだ。

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