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帰って行く場所がある。そこに行けば待っていてくれる人がいる。旅の終わりには必ずこの町に戻る。そこには先生がいる。彼は昔ここで住んでいた。でも、もう家族はいない。先生のもとに行くことで彼は日常に戻れる。
夏になると必ず長い旅をする。長期休暇を取り、いろんなところを訪れる。そして、最後は必ず、ここを訪れ、今ではもう年老いた先生に会う。この町を見て、それから、今、自分が住む(暮らす)ところに戻る。
もう先生以外、誰も、いない。いや、いないわけではないだろうが、合うべき人も見るべきもののもない。
ひきこもりの男、大学生、女子大生と女子高生。自動販売機から、80円のポカリスエットを買う。いくつものイメージが切れ切れに描かれる。でも、それらは微妙に重なり一つの世界を形成する。繰り返されるエピソードもある。チラシにもある「中学の時、親が離婚した。妹は1歳だった」で始まるナレーションもそうだ。記憶の中のできごと。幻のような町。現実と空想の狭間で、この短い芝居は走馬燈のように見え隠れする。
この芝居自体が、どこに行こうとするのかわからない。それでは芝居として体を成さないではないかと言われると、確かにそうだな、と思う。でも、この幻のように儚い65分の世界はなんだか心地よい。