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もういいかげんこの手のラブストーリーはうんざりだ、と何度となく書いているのに、また見てしまったのは、基本、自分がこういうのが好きだからだ、ということは認めよう。見てよかったか、といわれると、悪くはなかった、と答える。もっと凄い映画になっていたらなぁ、とも思うけど、なかなかそうはいかないのが現実だろう。
ただ、今回は少し「高校生の学園もの」という定番の枠組みからは外れる。少し新鮮。うだつの上がらない45歳のファミレス店長(しかも、大泉洋)と、女子高生(小松菜奈)の恋物語。40過ぎてまだ小説家の夢を棄てられない店長のドラマがいい。惨めだという気持ちを胸に抱きながらも、でも、まだ、そこにしがみついてしまう自分を棄てきれない。彼の話と小松菜奈の話のバランスがいい。もちろん、主人公は彼女だ。
でも、映画は学校がメインの舞台にはならない。学校からドロップアウトした女の子のつかの間の恋が描かれるからだ。そして、節度を守った「あり得るようなお話」になっているのがいい。どこがいいのか、わからないくらいに魅力的ではない中年男を好きになる女の子。戸惑いながら彼女の気持ちを受け止める。だが、受け止めるというのは、彼女の恋の相手を引き受けるのではなく、彼女の今の想いを尊重しながら、傷ついた彼女が、再び自分を取り戻すのを見守る、ということだ。だから当然この映画にはキスシーンもない。
怪我から陸上を辞めて、その後は目的も持てず、高校生活をただ、なんとなく過ごす。そんな時間を丁寧に描き、そこからバイト先でのエピソードへと繋ぎ、そして、店長への片想いへとつなげる。とてもわかりやすくて、さらりとしたタッチの映画で、『世界から猫が消えたなら』の永井聡監督らしい。ストーリーではなく、心情を丁寧に掬い上げるから共感できる作品になった。