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映画・演劇のレビュー

角田光代『世界中で迷子になって』

2013-06-28 22:09:26 | その他
普段はエッセイと評論については、読み流して、ここには書かないのだが、今回の2冊については、なんだかとても書きたくなった。大好きな角田光代さんと椎名誠さんだから、というわけではない。今の自分の気持ちにド・ストライクだったからだ。もともと、僕はこの2人の考え方が好きだし、だからその膨大な著作のほぼすべてを読んでいるのだが、なんだか今回は区切り、のようなものをそこに感じてしまった。

69歳になったシーナさんが死について赤裸々に書く。角田光代さんはなぜ自分が世界中を旅していたのかを、思いつきだけで書く。どちらもなぜか、今の僕には心地よかった。これっていつものことだが、おもっきり自分だけの気分。ただ歳をとって自分がとても弱気になっているから、椎名さんのこのエッセイ(『ぼくがいま、死について思うこと』)がこんなにも心に沁みたのだろう。50代になって、以前のように「なんでも出来る」というわけのわからないような≪自信≫がなくなってきた。実際、すぐに疲れるし、いろんなことに関してやる気がなくなっている。こんなはずではなかったのに、と自分を責める。でも、ダメ。

マイナス思考になっていた自分に、この本はあの椎名さんも同じなんだ、と思わせてくれた。そして、少し僕は元気になれた。そこに、続いて、この角田さんのエッセイである。最初は旅のエッセイなのだが、それが日常のこだわりにつながる。

大したことなんか書いてない。でも、今、ここに書かれる些細なことが、実はとても大事なことであると気付く。世界中で考えよう。大きなこととか小さなこととか、そんな比較なんか関係ない。アジアの田舎町を歩いていても、自宅でぼんやりしていても、どこにいても、なにをしても、自分は自分だ、と思う。このエッセイを読んでいると、なんだか、いろんなことが大丈夫ではないかと思えてくる。もちろん、そんな簡単なものではない、とわかっているのだけど、でも、そう思いたくなるような気分にさせられる、これはそんな本なのである。





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