なんとこれで今年のアカデミー賞の作品賞ノミネート10作品、すべてを見たことになる。快挙だ。たまたまだが、こんなことって今までなかった。だいたいすべての映画が日本で公開されているわけではないし。でも、今年はすでにアカデミー賞授賞式の段階でほぼすべての映画が公開されていたのだ。配信の力もあろうが、今はそんな時代になってしまったのかもしれない。いや、やはりそれは今年だけ特別なのかも。まぁ、そんなことはどうでもいいけど。
さて、大トリはポール・トーマス・アンダーソンの最新作である。最近重厚な映画が多かった彼がこんなノーテンキな青春映画を撮るなんて、なんだか変な気分だ。しかもこんなお話なのに大作並みに上映時間は2時間14分もある。でも、映画は軽い青春映画である。そして、なんとラストシーンでは主人公のふたりがお互いの気持ちに気づき、相手を探して走り出す姿のカットバック。映画はそんなふたりの姿を追いかけて行き、ちゃんとラストでは街中で出会い、抱き合い、キスするハッピーエンドだ。こんな映画は今時珍しい。テレることなく青春を謳歌する。と、そんなふうにも見えないことはない。だが、これはそんな単純な映画ではない。
低予算の青春映画のような内容なのに、実は、70年代を再現するために凄まじい労力とお金をつぎ込んである。さっきも書いたように、これは大作映画なのである。新人俳優男女2名が主人公で、彼らが自分の人生をどう選択していくのかが描かれる。この日、この映画を見る直前にたまたま見たもう1本の映画『わたしは最悪。』と同じようなお話なのだ。この2本を連続して見たことに深い意味はないけど、見た後、なんだか考え込んでしまった。偶然とは恐ろしい。今日は20代後半の女性の生き方を考える日になった。
『わたしは最悪。』はカメラマンになる女の子が主人公だったけど、こちらはカメラマンの助手をしている女の子が主人公だ。20代後半から30歳に至る年齢設定も同じだ。彼女が出会うのは15歳の高校生男子。彼に惚れられて、追い回されるところから映画は始まる。そんなふたりがそれぞれ自分の生き方を模索していく姿が描かれる。ただのラブストーリーではない。これは横道だらけの迷走映画なのだ。でも、なんだか爽快な一作でもある。