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小川洋子の小説の映画化だ。幻想的で官能的。映画は台湾を舞台にした。どことも知れない場所、という設定だけど。日本語と中国語が行き交う。
海辺の寂れたリゾート地。そこにある小さなホテル。日本人女性が経営している。そのホテルの娘(陸夏)は、ある客(永瀬正敏)に心惹かれる。彼女は、その男が嵐の夜、部屋に商売女を連れ込み暴力を振るっていたのを目撃する。怖いと思う気持ちを感じつつも、同時に彼に興味を抱く。
いったい全体彼女はこのしょぼくれた中年男のどこに心惹かれたのか。この映画にとって一番大事な部分であるそこがまるでわからないまま、お話は進んでいく。しかも、唐突なSM的行為に至っては、なんでそんなことを、と思うしかない。
これは果たして現実なのかそれとも幻想なのか。それだって曖昧だ。いくらなんでもこんなにも摑みどころのない映画にされたら、もうなんでもありになる。男の存在は幻想で、海で死んだ父親と重ねている、のかとも思うけど、そこも曖昧なまま。何を描こうとしたのかも不明。
台湾人の父親と日本人の母親の間に生まれた彼女が、ロシア文学の翻訳家である日本人と出会う。男は死んだように生きている。彼が暮らす小舟で渡る孤島と、彼女が暮らすホテルがある本島。ふたつの場所を往還してふたりの関係が深まる過程が描かれていく。不思議なタッチで綴られていく幻想譚は確かに心地よい。だけど、あまりによりどころとするものがなさすぎてこれでは戸惑うばかりだ。