是枝裕和監督の最新作。(今回もまた)カンヌ映画祭で話題になった作品。坂元裕二が脚本賞を受賞した。映画は凄い緊張感の持続でスタートする。一体何が起きたのか、怒濤の展開が押し寄せる。
小学校での教師による生徒への暴力。保護者が学校に担任を訴えに行くのだが、校長以下教員たちはただ謝るばかりで何ら適切な対応をしてくれない。問題の担任教師はヘラヘラしているばかりで何の解決もしないまま。こんなことがあり得るのか、と驚く。見ていてイライラが募る。警察に行け、とも思うけど、学校側は警察沙汰にはしたくないから、低姿勢での対応に終始する。密かな隠蔽工作をするばかり。
序盤はここまで。映画はまだ始まったばかり。母親は安藤サクラ。担任は永山瑛太。第1章は安藤サクラが主人公。第2章は視点を変え瑛太が主人公になる。今まで描かれていたことが必ずしも正しかったわけではないことが明らかになる。では真実はどこにあるのか。
そして、第3章は当事者である2人の子どもたちの視点から描かれる。それまでのさまざまな出来事の真相が明らかになる解決編なのだが、ここから先がさらなる闇に包まれる。子どもたちの抱える物語は単純ではなく、しかも解決はない。怪物は誰なのかという答えは曖昧になる。台風が去った後、明るい陽射しの中に出て行くふたりの子どもたちの未来は明るくない。
母親、担任だけでなく、周囲の人が抱える闇は明るみに出ない。子どもたちも同様に。中心にいるふたりの子どもたちより周囲のクラスメートの方が怖い。みんな怪物ばかりだ。こんな環境で育つ子どもたちはどんな大人になるのか。恐ろしい。
映画はまるでホラーだ。あんな不気味な教師たちのいる小学校に通う子どもたちはどんな異常者になってもおかしくない。是枝監督はこの映画で何を訴えかけたのか、よくわからない。まさか学園ホラー映画を作りたかったわけではあるまい。田中裕子の校長なんてホラーとしかいいようがない。これはA24の映画かと思ったくらいだ。前半の瑛太もそう。さらには後半の彼の豹変ぶりもまるで整合性がないから怖い。
正直言って腑に落ちない映画だ。納得いかないことも多々ある。冒頭の火災は子どもの放火だけど、わざわざあのエピソードから映画を始めたのはインパクトのあるシーンから描かれることで目を引くためにしか見えない。そんな安直な作りを何故是枝さんがしたのか、よくわからない。確かに凄い映画だけど、こけおどしのようにも思えて、なんだかなぁとも思う。