G-フォレスタが今回取り上げるのは『ナイル殺人事件』。アガサ・クリスティの作品は昨年の『そして誰もいなくなった』に続いて2作目となる。本格推理ものに堂々挑戦して、安心の一作に仕立てた。
メリハリがあり、わかりやすい。ある種お決まりのパターンなのだが、こういうお約束は心地よい。前半1時間40分。休憩の10分を挟んで後半は40分。解決編だ。バランスよくまとめた。
豪華な舞台美術が素敵だ。豪華客船の展望デッキだから、このくらいしないと作品に入り込めない。空間が真っ直ぐではなく、微妙な半円状に作られているのがいい。ここが船の眺めのいいテラスで、贅沢な空間だとわかる。そこに集うエジプト・ツアーの客たち。芝居はこの船に乗船する彼らをひとりひとり丁寧に紹介することから始まった。
数年前に劇団往来によるこの作品も見ている。あれは往来らしく随所に笑いを散りばめた作品だったが、本作は本格ミステリ仕様。乗船したメンバーの人間関係を丁寧に見せ、事件に繋げていく。果たして殺人事件の犯人は誰か。演出の丸尾拓は正攻法でじっくりと攻める。2時間30分、飽きさせない。犯人探しの推理(休憩の10分がそれに当てられる)を観客に委ねながら、後半は一気呵成に見せる。お話に奥行きがないのはいささか気になるけど、エンタメ作品として極上の仕上がりだ。