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映画・演劇のレビュー

『ディストラクション・ベイビーズ』

2017-01-11 22:22:22 | 映画
真利子哲也監督の商業映画デビュー作。初期の自主映画は何本か見ていたし、中編映画も何本か見たけど、これは満を持しての長編作品となる。想像通りの過激な作品で、彼のスタンスは変わらない。というか、想像以上に激しい。こんなにも挑発的で実験的な作品を作るのか、と驚く。



見るものを不快にさせる。理由のない暴力は人を不安にさせる。不安な気持ちを煽る。だが、それはただ、観客を刺激して不快感を募らせたいわけではない。人間の中にある暴力的な衝動を突き詰めて見せようとするのだ。



全く理由のない暴力。なぜ、彼は殴るのか。叩きのめされても怯えることなく、いつまでもいつまでも執拗に相手を追いかける。しまいには相手が音を上げる。なぜ、そこまでするのか、わからないから、怖い。その非常識な暴力の連鎖の果てには、何もない。暴力は暴力につながり、何の意味もない。



人の心のなかにあるこんな衝動と向き合う108分は苦痛でしかない。映画はそのむなしさを突き詰めていくばかりだ。その先には何もない。柳楽優弥はほとんどセリフもない役を演じる。ただただ殴るばかり。殴られるだけ。



菅田将揮はそんな彼に乗っかり、彼以上に過激な行為に走る。女子供という弱いものに暴力を振るう。無防備な女子高生への暴力なんて、えげつなくて見てられない。



お話らしいお話もないのに、スクリーンからは目が離せない。(DVDで見たからTVから、だけど)延々と続く暴力を見ているだけなのに、それに圧倒される。飽きさせない。なんなんだ、この映画は、と思う。好きな映画ではないけど、この映画を否定できない。ここには目をそむけることをさせない確かな「何か」がある。
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