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なぜか突然に封切直前で公開がなくなった。理由はわからない。もしかして関西では見れないのか、と心配した。だが、ようやく大阪でも22日から東京より1週間遅れて上映がスタート。
初日に見に行くことにした。モノクロで2時間49分の長尺映画である。普通ない。しかもミニシアターではなくTOHOシネマズでの公開。『パラダイス・ネクスト』の半野喜弘が監督・脚本・原案・音楽を手掛けた。主演は眞栄田郷敦。普通じゃない何かを感じさせる映画。
幼い頃に目が見えない状態になった男の子が10歳の時、手術で再び視力を手にする。ただ色彩は戻らない。暗闇の世界からモノクロの世界に。(だから映画はモノクロだ)
長崎から沖縄へ。一冊の写真集を手にした。東松照明の戦争を描く写真集だ。そして長崎で自称革命家の怪しい男(池内博之)に引き摺られて、戦争を見つめる旅に出る。
この2019年の旅を中心にして映画は展開する。長崎で出会ったその男とふたりで戦争の傷跡を描くドキュメンタリー映画を作ることになる。男は過激な発言をする。そして革命が必要だと言う。彼に心惹かれやがて愛し合うことになる。(唐突なベッドシーンには驚くが)
戦争を巡るあまりにストレートなやり取りには少し引いてしまうけど,こんな映画は今までなかったのではないか。それは議論するというより理不尽な言い争いだ。戦争を巡るふたりの対立がクライマックスになっている。だが,それは重なり合うことがない不毛なやり取りでしかない。
冒頭の暗闇が5分くらい続く。それが第一部の2009年。いくらなんでも長すぎるプロローグ。大胆にも程がある。だけどそれをやる。目が見えないことをこんなふうに描く。
第二部は2019年東京から長崎,沖縄の旅。ここが本編。最後の第三部は2070年。千葉が舞台になるエピローグ。冒頭のエピソードのみで視力を取り戻す話はラストまで隅に置かれたままだ。
描きたい気持ちはわかるけど、見せ方があまりに単純すぎるし安易。ラストの、戦争にはまだなっていないが人口が激減し疲弊した日本の姿から、彼が色彩を取り戻す姿を見せて小さな希望を提示するという展開をすることでこの映画は幕を閉じる。だがそこには答えはない。世界がどう変わろうと、大切なことはまず自分が生きること。そこから始まるというのか。力作だとは思うけど、これでは何かが足りない。