『アメリ』のジャン・ピエール・ジュネ、久々の新作が突然ネットフリックスで配信公開されていた。驚きつつ、大喜びしてさっそく見た。これは『天才スピヴェット』以来の作品ではないか。あれからもう8年になる。月日の経つのは早い。
今回も彼らしいキッチュな世界だ。でも、なんと今回はSF映画である。ピンクとオレンジを基調にしたセットで、AIが人類を支配するかもしれない、というなんだか暗くなりそうなお話だが、(そしてその予兆を描くのだけど、)お話自体の展開はとんでもないコメディで、バカバカしくて驚く。そして、これでは笑えない。見ながら、なんなんだこれは、と思う。今までの彼の映画は全部好きだけど、今回だけはいただけない。どうしてこんなおバカな映画を作ろうとしたのか。見終えたとき、暗い気分になった。大好きだった今までの作品(『エイリアン4』も含む)と違い、これだけはいただけない。彼がどうしてこんな映画を作ったか、その胸の内が知りたい。
ドタバタ騒動を通して、あきれた未来を予見する、というのだろうが、それに何の意味があるのか。見ていてまるでわからなかった。あほらしいお話をあほらしいままに見せていくだけ。これをデビュー作『デリカテッセン』のタッチで作るのならまだ納得がいくかもしれないけど、この徹底的なバカ騒ぎには取り付く島もない。どうして、こんなことをしようと思ったのか。教えて欲しい。
旧式の4台のロボットが人間になりたいと思い奮闘する姿や、バカな人間たちの右往左往が、ワンシチュエーションで描かれる。家から出られなくなった家族がなんとかしてここから脱出しようとするのだけど、無理。で、脱出したらどうなるのか、とか、この世界はこれからどこに向かうのかとか、そんなことには一切触れない。何が何だかの映画なのである。これはありえないような悪夢の駄作だ。
実は今日、この映画に先立って『地球外少年少女』というアニメ作品(6話からなる長編で、今年2本に分けて劇場公開もしているようだ)も見たのだが、これも後半めちゃくちゃになるけど(前半は凄くおもしろかった!)、せめてここに描かれる未来や宇宙のようなタッチでこの『ビッグ・バグ』が描かれていたならなぁ、と思った。それすらもここにはない。