帰国子女として途上国から日本に戻ってきた男が、その後もこの国(日本です)になじめず大人になった。そして30歳になった。そんな彼の日常のスケッチ。部屋の中には、たくさんの植物。そこをガーデンとして暮らしている。人と付き合うのがあまり好きではない。だから、特定の恋人は作らない。(もちろん、結婚もしない)ただ植物を愛する。
雑誌の編集の仕事をしている。毎日をただ静かに生きていく。別に夢とか希望とかは、ない。人並みには人付き合いもする。恋人のような女性もいる。だが、自分のテリトリーには入れない。もちろん、自分の部屋にも入れない。(ひとりだけ、入れる子もいるけど、彼女はまだ20歳くらいで、中性的存在で、友だち)世界となじめないし、なじもうともしない。
ストーリーはない。事件も起きない。スケッチの積み重ね。小説の最初から最後まで、変わらないまま。(最後に2人が自殺未遂を起こすけど) それだけ聞くと、とても退屈な作品に見えるだろう。だが、そうではない。ひとりの男をただ見守るだけで、とてもスリリングで飽きさせない。ただ1日1日を生きていることって、こんなにも興味深い。
ラストに自殺未遂のことだけど、それは彼のせいではない。ただ、彼の他者への関わり方が関連する。自分一人で閉じてしまい、それが他者を傷つける。そんなこと、知ったことではない、とばっさり切り棄てることは出来ない。そこで初めてお話が動き出すところで終わる。