こういうファンタジーはよくある。いささか食傷気味だ。だが、堺東高校のこのチームは真正面からこの題材に挑み、90分の長さを飽きさせることなく、しかも、淡々としたタッチで最後まで見せきった。特筆すべきは、主人公の駅長を演じた中林幸穂。彼女の芝居が凄い。あの静かで、余裕のある口跡。なんだか、引き込まれる。大人っぽい、とか、そういうのではない。それどころか、子どもっぽい顔をした少女なのに、駅員の姿をした彼女にはなんだかしれないすごい説得力があるのだ。包容力もある。彼女に諭されたなら、僕なら納得する。「そうだね。」なんて言われたら嬉しい、と思う。(何なんだ、それって!)
お話自体はありきたりなファンタジー。それ以外には特筆すべきものはない。でも、そんなこと、なんだというのだ。それだけで、最後まで見せ切れたのだ。しかも、彼女のワンマン芝居では断じてない。それどころか、彼女は分をわきまえている。前面には出ない。ちゃんと芝居全体を見守っている。その控えめさがまた、シビれる。甘いモノに眼がない、というのも、かわいい。
なんだかお気に入りのアイドル映画(そんなもの、この21世紀には、もうない、のだけど)を見た気分だ。なんだか、とっても不思議。