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映画・演劇のレビュー

真紅組『宵山の音』

2014-07-13 22:58:19 | 演劇
 まるで番外公演となった前作『新・幕末純情伝』を引き継ぐように、同じく幕末の京都を舞台にした大作である。『宵山の音』、なんと10年振りの再演となる。アート館の3方囲み舞台を縦横に使い、華やかで艶やかな芝居を見せる。

 1864年、祇園の芸者置屋を舞台にして、そこにやってくる男たちとのやりとりを明るく楽しく見せていくのが眼目だ。ストーリーよりも、個々のキャラクターを重視して、彼女らを突出させるのではなく、そんな彼女たちの送る生活の方を描く。なんでもない毎日。それを動乱の時代を背景にしながら描く。だからこれは歴史絵巻ではなく、そんな生活者たちのバイタリティを描くことこそがテーマなのである。

 だが、地味な芝居ではない。初演以上にパワーアップして、華麗壮大な絵巻物としてそれを見せる。女たちの煌びやかな衣装は目に鮮やかで、彼女たちの踊りや舞、男たちの立ち回り、笑いあり、涙ありの2時間の一大エンタテインメントである。

 一応のクライマックスとなるのは池田屋事件だが、見せたいのはそこにはない。女たちにとってそれは歴史の一ページではなく、日々の中に埋もれてしまうものだ。芝居は庶民のエネルギッシュな生活のスケッチとして全体が構成されてある。いつものように祇園祭がやってくる。その直前の日々のスケッチを通して、いろんなことがあるけど、生きているのは楽しい、そんな気分が描かれていく。

 こういうあっけらかんとした芝居をこんなにも華のある作品として堂々と見せてくれるところが彼らの真骨頂であろう。演出の諏訪さんは、阿部さんの台本の意図をきちんと汲み取って、エンタメという骨格の中で、見事に彼らの生き生きとした姿を活写した。群像劇のなかで、ひとりひとりがちゃんと輝いている。


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