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映画・演劇のレビュー

劇団大阪シニア演劇大学新3次生『想稿・銀河鉄道の夜 Ver.3.1』

2022-07-25 09:48:02 | 演劇

3年ぶりの本公演となるようだ。コロナのために公演の延期、中止を強いられ続け、ようやく満を持しての上演になる。ここに至る過程は想像を絶する。シニアが演じるというリスクの高さゆえ、慎重に慎重を期して挑む。劇団ではなく「演劇大学」という名目での公演だが、彼らは本気だ。そこには老後の手慰みでしかない甘えはない。これは暇つぶしの遊びや余芸、習い事ではなく、みんながお芝居に全力で挑む。挑戦なのだ。芝居に賭ける。そんな情熱がそこからは感じられる。だから、見ていて力が入る。でもそこには悲壮感はない。まず、楽しい。そこが大事だ。彼らは芝居を楽しんでいる。その気持ちが伝わってくる。それがいい。

正直言うと学芸会を見ている気分だ。演出や装置、スタッフワークは見事だけど、役者があまりにレベル差がありすぎて、凸凹している。バランスが悪い。でも、それでいい。いや、そこがいい。いろんな人たちが参加している。巧拙は気にしない。そのすべてを包み込んで、この芝居がある。セリフが飛んでしまっても、プロンプに助けてもらえばいい。音楽劇なので歌うシーンも多々ある。それぞれが臆することなく、気持ちよさそうに歌い上げる。敢えてこれは「学芸会」でいいと思うのだ。でもそれは甘えではない。大切なことはひとりひとりがここにいて、それぞれが(観客である我々も含めて)全力でこれを楽しんでいることなのだ。芝居のラストで「お客さんも一緒に『星めぐりの歌』を歌いましょう!」と言われ、舞台上と客席が一体となって歌うことになる。感動的だ。

 

老人たちが(ごめんなさい!)演じるこの童話は、『銀河鉄道の夜』なのに、なんだか明るい。もちろんカンパネルラが死んでしまうのに、である。だが、死は終わりではない。新しい旅立ちだ。だから、ちゃんと見送るべきなのだ。たくさんの人たちが銀河鉄道で旅立つ。そこにも悲壮感はないのがいい。


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