東京23区、家賃5万以内のワンルームマンションを探しての小さな旅。銀座が大好きな作家が、(もちろん小野寺)SUUMO(このエッセイを連載したパートナーでもある)で物件を探して、そこに住んだらどうなるかを夢想しての街歩き。だがこれは部屋探しではなく、あくまでも部屋を起点にした街歩きだ。そこに住んだら、周囲に何があるかを探検するほうが目的。そして23区あるのだから、23話。
こんなエッセイって、なんだか楽しい。TV番組にもなりそうな企画。いや、TVの方が向いているはず。だけどそれを敢えてエッセイにした。1日歩いて、1日で書く。そういうルールの中で小野寺さんはこの小さな旅を楽しむ。毎回、その町にある図書館とか喫茶店、食堂を(たまたま)楽しむ。名所旧跡はいらない。暮らしは生活するためにある。観光ではない。でも、これは生活を観光にしている気がする。先日読んだ安西水丸の『東京ハイキング』のグレードアップヴァージョンって感じで街歩き大好き人間にとっては至福の書。
僕は娘が東京暮らしをしてから、東京に行くことが増えたし、東京のいろんなところを歩くようになったから、なんだかこの本に書かれてることがとても身近で親近感がわく。自分が歩いたところを小野寺さんも歩いている。もちろんほとんどは知らないところばかりだけど、今度東京に行ったら歩いたみよう、と思わされたところも多々ある。
娘が住んでいる練馬区はどんなふうに書かれてあるのか、気になったから先に読んでしまったが、石神井公園のほうで、残念。娘の家は光が丘公園のほうなのだ。東京では娘の家に泊めてもらうパターンとホテルの泊まるバターンの2パターンがある。ホテルの場合はそこに(数日だけど)暮らす感じで過ごすからホテル周辺はとても身近で親近感がUPする。まるで自分の家の気分。そんなだからこのエッセイにこんなにも共感できるのだろう。楽しい。