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映画・演劇のレビュー

金蘭会高校『山姥』

2018-04-02 19:29:16 | 演劇

 

これはとても難しい作品だ。母親の息子への愛、というわかりやすい中心を成すものはあるにはあるけれど、それだけではない。その周辺の様々な問題が複雑に絡み合う。どちらかというと、そっちが難しい。人と獣、神、自然、村落共同体。

 

金蘭はこの作品に4年前にも挑んでいる。シンプルで美しい作品だった。今回、今のメンバーでもう一度挑んでみようとしたのは何故か。それが知りたいから見てみたいと思った。高校生だから毎年メンバーが替わっていく。4年経つと完全に同じメンバーはいない。そんな中での再演は初めての挑戦と同じだ。だけど、顧問の山本先生にとってはまだ鮮明に前回の事は残っている。

 

とても過剰な芝居だ。これでもか、これでもか、といろんな要素を取り込み、詰め込み見せてくれる。山本先生はこのチームに何が出来るのかを突きつけてくる。彼女たちにこの台本を与えるだけでもハードルは高いのに、これで何が可能なのか、と問いかける。それに応えて、彼女たちはこれだって、あれだって出来るのだ、と見せつける。やり過ぎは本来よくない。でも、敢えてやってやろうじゃないか、という心意気をよし、とする。シンプルで美しい神話として作り上げることもできたはず。初演はそうだった。しかし、このチームでやるのなら同じ事はしない。今だから出来ることをしたいと思う。

 

人間の愚かさをこれでもか、これでもかとつきつけてくる。しかし、この芝居はそんな人間たちを断罪するのではなく、愛で包み込む。アドリブも含めて笑わせ、泣かせるエンタメとして成立させる。しかし、根底を流れるものは揺るがない。母親の息子への限りない無償の愛をキンランらしいスペクタクルとしてきちんと見せてくれる。

 

高校演劇部の春休み公演なのに、それをなんと3日間3ステージというロングランで上演した。まずその無謀とも言える試みに感動する。集客も含めてそういう上演スタイルが可能だというのがすごい。そしてそれにチャレンジする彼女たちが眩しい。常に新しいことに挑む。今まで見たこともないことをする。これからも彼女たちから目が離せない。


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