習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『家族の誕生』

2008-12-10 21:06:54 | 映画
 こんな映画があるから、韓国映画はやめられない。一見軽いタッチのコメディーにも見える。そう思う人はそういう理解で十分だ。肩肘張った映画ではない。3話からなるオムニバススタイルを取る。最初にそれぞれの主人公たちが出てくる。最後に出てきた女性がまず最初のエピソードの主人公となる。

 大好きな弟が5年振りに帰ってくる。だが、女の人を連れている。しかもその女性はどう見てもかなりな歳だ。弟は「おれの妻だ」なんて言ってベタベタしている。彼女はそんな2人を何も言わずに迎える。自分より年上でも嫌だ。「弟のお嫁さん」というだけで充分嫌だ。なのに、あれはない。親子ほども歳が違う。この衝撃的なエピソードからスタートして、凄いことがただ淡々と描かれていく。それをただ顔色も変えずに受け入れていく。弟のいいかげんさ。そんなことは昔からよく知ってる。だが、改めてその勝手さを思い知る。やがて、弟のお嫁さんの子どもまでがやってくる。もちろん、受け入れる。

 第2話は二番目に出てきた女の話。そして彼女とその母親の話。そして、母親のまだ幼い息子。母は男癖が悪い。次々に新しい男を作る。主人公はそんな母が嫌いだ。彼女は調子のいい女だ。がむしゃらに自分を売り込む。そのバイタリティーに圧倒される。日系企業に就職したいと思っている。日本語が出来る。それを武器にしたい。だが、なかなか上手くはいかない。そんな彼女と母親の関係が描かれていく。この話もかなり面白い。

 どうしようもない家族との絆がこの映画を形作る。3話目に入って、しばらくして気付く。この最終話はもしかしたら、最初の2話に出てきた2人の子どもたちが成長して大人になった後の話ではないかと。そして、2人が出会い恋に落ちた。そんな話ではないかと。そのことに気付いたところから俄然面白さが増してくる。

 これは、いったいどういうまとめ方がなされるのか。期待はそこに絞り込まれる。前2話がどうリンクしてこの最終話と重なるか。一見バラバラの話に見えたこの3つの話は、実はきちんとつながる。そのつながり方が凄い。ご都合主義ではない。運命とはこんなふうに出来ているのか、と素直に感心させられるのだ。

 よく出来た話だ。お話によって何を語るのかが、映画や芝居の大事なポイントであろう。バラバラでしかない人間同士が意外な絆の元でちゃんと繫がっていく。血のつながりなんてないのに、家族がそこに生まれる。その感動の瞬間が奇跡的に描かれていく。でもほんとうは、これは奇跡なんかではない。

 家族は生まれる。誰もが誰かとつながりを持つ。それは確かに簡単なものではない。だが、気が付いたならみんながそこにある。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 第2劇場『3人と、七面鳥』 | トップ | 『死にぞこないの青』 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。