習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』

2024-07-23 12:49:00 | 映画
これはまるで懐かしのピーター・ハイアムズの『カプリコン1』のような話ではないか、と見る前には思ったけど、実際見てみるとまるで違う映画だった。まぁ当たり前か。あれはアクション映画だが、これはどちらかというと、実録ドラマで恋愛映画、コメディタッチのお仕事映画だったりもする。それにしてもこれは久々のハリウッドらしい大作映画で、ゴージャス。事実を通して、まさかのフィクションを加味する。その絶妙なブレンドが心地よい。こんな素敵な映画は滅多にない。これを見逃したら惜しい。見てよかった。

アポロ11号の月面着陸を描く映画だが、それが捏造したフェイク映像だったのではないか、というミステリー仕立ての映画、ではない。宣伝担当のスカーレット・ヨハンソンと元パイロットでNASAの技術屋、発射担当チャニング・テイタムがお互い意識しながら、協力して月面着陸を成功させるまでが描かれるハートフル・コメディ

これはアメリカが国家の威信を賭けて挑む月面着陸の夢。だが、それを感動的な人間ドラマとして描くのではない。タッチはどちらかというとコメディなのである。しかも、あの年はベトナム戦争中で、アメリカは大変な状態にあったという事実もしっかり踏まえている。夢と現実の狭間で国家も人民も揺れていた。社会背景もしっかり踏まえている。

莫大な国家予算を投入して月に行くことよりも泥沼化した戦争を終わらせることが第一の使命ではないか、と誰もが思っている。そんな中、人類が月に立つことはどんな意味を持つか?

背景にはそんな重い社会問題も抱えているけど、この映画は「それでも夢を見ていい」という。お話には、なんとあの『ペーパームーン』にも通じるものまでもがある。あれは果たして本物の月なのか、と。だけど私を月に連れてって、というロマンチックな夢を見ることは悪いことではない。こんないろんな意味で豪華な映画はめったにない。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 山野辺太郎『恐竜時代が終わ... | トップ | 原宏一『同居鮨 間借り鮨ま... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。