淡い。淡すぎてなんだか幻を見たみたいだ。読後、透明な何かが心の隅にわだかまる。だが、それがなんだかはわからない。もう少し輪郭をはっきりさせて欲しい。そうすればきっと見える。大事なものの数々が。だが、この小説はそれを覆い隠してしまう。隠すのではなく、そんなものは最初からなかったものとでも言わんばかりだ。ただただぼんやりしたそんな小説だ。こんなにもおもしろいのに、明確なものは何も残らない。さっと消えてしまう。
兄の婚約者が家にやってくる。両親はそわしわしている。女友達と映画に行く。彼女のボーイフレンドもついてくる。3人は大学時代の友達だ。その女友だちが仕事を辞めてマンガを描く。それで身を立てるためではない。それほどおめでたいわけではない。魔女の話らしい。何もしない魔女だ。ただ生きて時代を見守り、死んでいく。兄の結婚式に出席する。お嫁さんは幸せそうだ。4つ目の小説である『魔女の仕事』はこんなお話。
その他の3篇も同じような感じだ。何もない。見事なまでに。日常のスケッチにすらなってないくらいに淡いのだ。4,50ページの短編というのもなんだか微妙だ。長くはないが、短編と言うには中途半端な長さだ。しかも、話らしい話はない。緩いタッチでけだるい。生きていくことに疲れたとかいうのではない。ただ、なんとなく生きてる。ゆっくりと時間は過ぎていく。後にはなにも残らない。
恋人と別れることになった友人に頼まれて、留守の彼女の恋人宅に忍び込んで、亀を取り戻しにいく。他人の部屋に勝手に入る。表題作『ぬかるみに注意』。
クラスのちょっと気になる女の子のために英語の追試の日程を聞きに一緒に職員室に行く。拒食症の彼女は飴を食べる。そんな飴のひとつを貰う『カノジョの飴』。一人暮らしの弟のところに母に頼まれて様子を見に行く姉。メガネを失くしてイライラしている弟と過ごす1日を描く『浮いたり沈んだり』。4つとも、とても中途半端。だからあやうい。彼女たちは自分からは何もしない。受け止めるというにはあまりに淡い日常の日々。そんな中を漂う。『たとえば、世界が無数にあるとして』同様摑みどころがない。そして、そこがとても魅力的。生田紗代さんの世界の虜になる。
兄の婚約者が家にやってくる。両親はそわしわしている。女友達と映画に行く。彼女のボーイフレンドもついてくる。3人は大学時代の友達だ。その女友だちが仕事を辞めてマンガを描く。それで身を立てるためではない。それほどおめでたいわけではない。魔女の話らしい。何もしない魔女だ。ただ生きて時代を見守り、死んでいく。兄の結婚式に出席する。お嫁さんは幸せそうだ。4つ目の小説である『魔女の仕事』はこんなお話。
その他の3篇も同じような感じだ。何もない。見事なまでに。日常のスケッチにすらなってないくらいに淡いのだ。4,50ページの短編というのもなんだか微妙だ。長くはないが、短編と言うには中途半端な長さだ。しかも、話らしい話はない。緩いタッチでけだるい。生きていくことに疲れたとかいうのではない。ただ、なんとなく生きてる。ゆっくりと時間は過ぎていく。後にはなにも残らない。
恋人と別れることになった友人に頼まれて、留守の彼女の恋人宅に忍び込んで、亀を取り戻しにいく。他人の部屋に勝手に入る。表題作『ぬかるみに注意』。
クラスのちょっと気になる女の子のために英語の追試の日程を聞きに一緒に職員室に行く。拒食症の彼女は飴を食べる。そんな飴のひとつを貰う『カノジョの飴』。一人暮らしの弟のところに母に頼まれて様子を見に行く姉。メガネを失くしてイライラしている弟と過ごす1日を描く『浮いたり沈んだり』。4つとも、とても中途半端。だからあやうい。彼女たちは自分からは何もしない。受け止めるというにはあまりに淡い日常の日々。そんな中を漂う。『たとえば、世界が無数にあるとして』同様摑みどころがない。そして、そこがとても魅力的。生田紗代さんの世界の虜になる。