五反田団の前田司郎が書いた『愛でもない青春でもない旅立たない『恋愛の解体と北区の滅亡』に続く第3作。
相変わらずの脱力感で、よくもこんなにユルユルした小説を、しれっと書けるものだ、と思う。初めて彼の芝居を見た時(『家が遠い』)一体全体このユルさはなんのつもりなのか、と思った。あの時の気分そのままの小説で、舞台以上に小説の方が衝撃的なのは、「へたうま」っぽかった舞台より明らかに作為的無意識が際立っていたからなのか。というか、どちらもよく似たもので、結局、この数年間で彼が上手くなったって事なのかも知れない。
でも、書き下ろしの併録された中篇『ゆっくり消える記憶の幽霊』のくだらなさを見ていると、まだまだこの人って、文学に毒されず、ほんとに子供っぽいだけの、ただのバカだなぁ、と思わされる。だいたい自殺する女が崖から地面に落ちるまでの数分間の物語なんてのを、延々書くなんて、高校生並の幼稚さで、でもこれを本気で書ける若さっていいなぁ、と思う。
主人公の(というか、彼女しか出てこないが)女が、なんだか、男にしか見えないのは、作者の筆力のなさで、本人が独白で「私」とか言ってても「おまえ前田司郎だろ」としか思えない。女性に一人称のはずなのに。
さて、タイトルになっている『グレート生活アドベンチャー』(いつもながらの素晴らしいバカタイトル。これを彼のセンスのよさととるか、ただのバカととるか、は微妙で、でもどっちにしても凄いことには変わりない。)は、何も考えずに生きている30男の日々をただダラダラと綴っただけなのに、ラストの「結婚しようよ」と彼女に言うところまで、一気に読ませてしまう。このリアリティーは、ただごとではない。
人間って、普通、悩んだり、落ち込んだりして、考えながら生きているものだが、この主人公は、ただ毎日、ゲームして、食べて、寝て、ゲームして・・・そんなふうに恋人の部屋に寄生しているだけで、ほかに何もしない。もちろん働かない。「さしあたって、悩みも仕事も将来への不安もない。なんだか、凄えな、俺」ほんとにあんたは凄えよ。
こんな男を飼っていられる加奈子も凄いな、と思う。類は友を呼ぶ、ってほんとだなぁ。まぁ、小説だけど。
作者が何かを主張しない。全くしない。なのに、読んでいてこんなに面白い。この中身はこんなにも空っぽなのに、それがこんなに面白いって、ある意味異常だと思う。それを成し遂げてしまった前田司郎。あんたはこの主人公より凄いよ。きっと。
相変わらずの脱力感で、よくもこんなにユルユルした小説を、しれっと書けるものだ、と思う。初めて彼の芝居を見た時(『家が遠い』)一体全体このユルさはなんのつもりなのか、と思った。あの時の気分そのままの小説で、舞台以上に小説の方が衝撃的なのは、「へたうま」っぽかった舞台より明らかに作為的無意識が際立っていたからなのか。というか、どちらもよく似たもので、結局、この数年間で彼が上手くなったって事なのかも知れない。
でも、書き下ろしの併録された中篇『ゆっくり消える記憶の幽霊』のくだらなさを見ていると、まだまだこの人って、文学に毒されず、ほんとに子供っぽいだけの、ただのバカだなぁ、と思わされる。だいたい自殺する女が崖から地面に落ちるまでの数分間の物語なんてのを、延々書くなんて、高校生並の幼稚さで、でもこれを本気で書ける若さっていいなぁ、と思う。
主人公の(というか、彼女しか出てこないが)女が、なんだか、男にしか見えないのは、作者の筆力のなさで、本人が独白で「私」とか言ってても「おまえ前田司郎だろ」としか思えない。女性に一人称のはずなのに。
さて、タイトルになっている『グレート生活アドベンチャー』(いつもながらの素晴らしいバカタイトル。これを彼のセンスのよさととるか、ただのバカととるか、は微妙で、でもどっちにしても凄いことには変わりない。)は、何も考えずに生きている30男の日々をただダラダラと綴っただけなのに、ラストの「結婚しようよ」と彼女に言うところまで、一気に読ませてしまう。このリアリティーは、ただごとではない。
人間って、普通、悩んだり、落ち込んだりして、考えながら生きているものだが、この主人公は、ただ毎日、ゲームして、食べて、寝て、ゲームして・・・そんなふうに恋人の部屋に寄生しているだけで、ほかに何もしない。もちろん働かない。「さしあたって、悩みも仕事も将来への不安もない。なんだか、凄えな、俺」ほんとにあんたは凄えよ。
こんな男を飼っていられる加奈子も凄いな、と思う。類は友を呼ぶ、ってほんとだなぁ。まぁ、小説だけど。
作者が何かを主張しない。全くしない。なのに、読んでいてこんなに面白い。この中身はこんなにも空っぽなのに、それがこんなに面白いって、ある意味異常だと思う。それを成し遂げてしまった前田司郎。あんたはこの主人公より凄いよ。きっと。