まさかのひらがなだらけの小説である。これは読みにくい。いちいち漢字変換して読まなくてはならない。いかに僕たちは表意文字に助けられているかを改めて知る。全体の9割くらいにひらがなが使われている。もちろん故意に。
しばらく我慢して頑張って読んでいるとなんとか慣れてきた。慣れは凄い。語り手である主人公の彼女は25歳で融合手術を受けて死なない体になった。老化せず、100年。25歳の体のまま,生きた。本当は死にたかったが、父親が許さなかった。
自発的幇助自死法で安楽死措置が認められた世界を舞台(同時に融合手術で永遠の命も可に)にして、家族のみんなが亡くなった後のひとりの日々に家族史を書く。
後半に入ると、ひらがな表記から普通の文体になる。(せっかく慣れたのに少し残念)北九州の山奥から新首都になった秋田県能代市に舞台は移る。彼女は北九州から徒歩で秋田までやって来て、残存する人と出会う。彼らは地球を離れて新しい星を探す旅に出る。随行を促されるが、断り地球に残ることにする。
エピローグでは完全にひらがな表記だけになる。たったひとりここに残り朽ちていく。もう一度生まれ直すなら、自分に正しい生き方をする。もちろんもう一度なんてないが。よくあるSFの設定を斬新な切り口で新鮮なドラマとして再構築した。目新しい展開はないけど、面白く読める。