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映画・演劇のレビュー

黒野伸一『脱 限界集落株式会社』

2015-05-24 18:50:24 | その他

前作から4年になる(らしい)。再び止村の人たちが帰ってきた。ちょっとヒットすると、翌年には安易な続編が横行する中、満を持しての登場である。というか、この本が出たときには、最初は「おまえもか、」と思った。だから、ちょっと手に取るのが遅れた。だが、躊躇する必要なんかなかったのだ。これは、実に素晴らしい視点を持つ続編だ。まるで安易ではない。というより、まったく新しい視点からあのお話のその後をちゃんと描いていく。あれだけで終わりにしていたなら、きっと不完全なものだったのだ、ということすらを、この作品が教えてくれるのである。まいった。

東京からやってきた男が限界集落の再生を図る。最初は地域の農民たちから、うさんくさく見られていたけど、だんだん彼の取り組みに賛同者が増えていき、気がつくと、とんでもない夢が実現していく。前作はそんなお話だった。

今回、夢が実現した後、新たなる試練が待ち受ける、というパターンを踏みながらも、主人公を別の二人にして、でも、後半になると前作の二人がちゃんと、お話の前面に介入してくるというパターンを使う。腹が立つほどにうまい。

今ではシャッター通りとなっている駅前商店街の再開発を巡ってのお話なんか、どこにでもあるような安易なものに見えるのに、それすら住民目線で丁寧に描きこむことで、とても新鮮。しかも、安易な(もう安易の連発!)打開策ではなく、目からうろこの解決策をちゃんと提示して、読み終えたときには元気いっぱいにさせられる。ラストの展開があまりに急展開で驚くが、でも、そういうところも含めてうまい。

折角のアイデアがラストで台無しになるというパターンもよくある中、黒野伸一は、これがエンタメであるだけでなく、ここに地域活性化の一つの青写真すら提示したのだ。ここにはあらゆるヒントが詰まっている。各地にショッピングモールを量産してそれで地域活性化なんて言っていると、きっとこの先とんでもないことにあるのは、必定だ。ひとりでもたくさんの人たちにこの本を読んでもらって、考えてもらいたい、なんて。




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