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映画・演劇のレビュー

『サンシャイン2057』

2007-05-06 06:54:23 | 映画
 『トレインスポッティング』で鮮烈なデビューをしたダニー・ボイルはその後意外な方向へとキャリアを進めていく。ディカプリオと組んだりしてハリウッド・メジャーを目指しているように見せながらも、『28日後』は、B級テイストのゾンビ物であったし、今回もまたB級SFアクション・テイストの作品をかなり歪な展開で見せてくれる。

 『ザ・ビーチ』以降一貫して「ここではないどこかに」向かっていくお話を作り続け、それは『トレ・スポ』の閉塞感を引き継ぐものであることは明白なのだが、そこへの行き方が、なんだか普通ではない。(そういえば『普通じゃない』という映画を『トレ・スポ』の後に撮ってたなぁ)現実世界ではなく明らかに虚構世界で観念としての世界の果てを目指していく。『サ・ビーチ』はそのロケーションの美しさもあってあまり気にならなかったが、明らかにあの時から確信犯的である。ドラッグによってトリップしていく延長線上に彼の映像世界はあるのだろうか。ゾンビ物とか、スペース・オペラというハリウッド好みの定番の衣装をまとっても、ハリウッド的な明快な娯楽映画にはならない。

 スケールの大きい作品なのに(予算的にもかなりの規模であろう)こんなにも自閉的なものになってしまっていていいのかと、見ているこちらが心配になる。母国ではヒットしたのかもしれないが、日本では当然劇場には人は来ない。(たぶんアメリカでも黙殺されただろう)ゴールデン・ウィーク中の梅田ナビオなのに、がらがらの劇場には10人くらいしか人が居なかった。この手の映画ファンはみんな『スパイダーマン3』を見に行ったのだろう。

 映画の前半はストーリーがあまりに単調で眠くなるし、後半はワケのわからないモンスターが宇宙船の中に入ってきて大暴れするし、表面的にはアホ映画のスタイルを踏むが、全くそれをハラハラドキドキで見せたりしない。めまぐるしい映像はサブリミナルも応用し、ドラックによる悪夢を見せているようで、太陽を映すところなんか眩しすぎてスクリーンが見てられないという凄さである。

 期待の真田広之船長は前半で姿を消してしまうし、ミッシェル・ヨーはアクションもなく、静かに庭いじりしてるし、とてつもなくつまらない映画だったが、でも、ダニー・ボイルがこの次に何を作るのか、なぜか気になる。

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