これは食を巡るエッセイ集。一年の出来事を順に書いてある。卯月から始めて弥生まで、毎月ふたつずつのエピソードが披露される。最初は「なんだか専門的過ぎて(いろんな知らない食材とか、ね)わかりません」というのがたくさん出てきて、無理かも、と思ったけど、大丈夫だった。おいしい話は伝わる。お話を伝えるのではなく、おいしいを伝える。
梅干しの話が心に沁みる。自分にも心当たりがあり、なんだかいろんなことを考えながら読むことになった。生前母親は毎年梅干を漬けていた。だが、ある年、大量にカビが生えてダメにしてしまった。その後、今度は漬けかたを忘れた。こんなところからも認知症の症状が出ていたのだ。そんなこんなを思いながら読む。
実は今、山中温泉に来ていて、のんびりリゾートを楽しみながらこの本をゆっくりと少しずつ読んでいる。慌てる必要はない。ダラダラしている。
温泉で3泊なんて初めての体験だ。しかも、別に何をするわけでもない。あらかじめ立てている予定はないから何をしてもかまわない。だから、ぼんやり時を過ごす。毎日おいしいものを食べ、温泉に浸かって、のんびり過ごす。毎日散歩して、無理せず行きたいところに行き、夕方から露天風呂で、6時半には晩御飯。毎日蟹三昧🦀
どうでもいいことを丁寧に書いている。おいしいものの話を自分の体験から書き起こす。個人的なことが、みんなに伝わってくる。食べることを書くって難しいけど、楽しい。これはそんなエッセイ。