劇団青い鳥の『ガルボの帽子』を20年ぶりで再演した作品。懐かしい。青い鳥の世界は、もしかしたらあの頃以上に今の時代に優しいかもしれない。演じる側の年齢が高くなり、老人を演じることがリアルになってきたからこそ、反対に老人のかわいらしさを描く作品はあみゅーずにとってとても自然なこととなる。
青い鳥作品にはファンタジーのなかに漂うリアルな感触にドキドキさせられてきたはずが、今見ると、すべて含めてなんだかやさしい世界になる。この気持ちのいい場所で微睡んでいればいい。難しいことは一切いらない。穏やかな時間を過ごすだけで充分なのだ。それは何も考えないというわけではなく、「今は考えない」ということだ。逃避ではなく休息である。
ここから出ていくために、その前に少し佇むこと。彼女たちがここからどこへと向かおうともここで過ごした時間は宝物だ。彼女たちを見守ってきた妖精たちと別れ、新しい場所に行く。それはきっとそこから始まる新しい冒険なのだ。でも、今はその前にここでちょっと一休み。そんな気分にさせられる作品になった。
3人姉妹と3人一組の妖精たちの2ペア。そんな6人の小さなお話。ゴキブリに大騒ぎして、父のお気に入りの帽子を手にする。たわいもない時間が過ぎていく。(そういえばこの日が、父の60回忌だなんてことを忘れていた。)
条あけみと笠嶋千恵美が二人三脚で積み上げてきた歴史。それを支える仲間たち。いつも変わらぬ固定メンバーのスタッフやキャストもやさしい。もちろんお客さんも。あみゅーずは今年で29年になる。すごいとしかいいようがない。