習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『7つの贈り物』

2009-02-05 23:10:27 | 映画
 ウイル・スミス最新作は『幸せのちから』でもコンビを組んだガブリエレ・ムッチーノ監督作品。先の作品と同じようにウイル・スミスはここでも等身大の男を演じる。

 話はなかなか先が読めない。半分くらいまで来てもこの話がどこに行き着くのかはわからないままだ。さまざまな人物との関わりにしてもこまぎれでなかなかその因果関係は摑めないように作られてある。最後まで見なくてはわからない。予備知識は入れないほうがよい。だが、かなり集中して見なくては映画についていけない人も出てきそうだ。ハリウッド映画なのに、けっこう知的な映画と言える。

 話の謎解きが出来たからといって、感心はしない。だってそれはことさら斬新なアイデァではないからだ。このくらいの仕掛けはどうってことはない。だが、敢えてネタばれさせる必要もなかろうからここには何も書かない。

 映画が善意の押し売りにはならないのはいい。傷ついた彼が、関わりを持つ人々に与えようとする親切は彼の心を癒していくわけではない。そんなことをしたからといってなんら彼の痛みは癒えはしない。

 「神は7日間で世界を創造したが、僕は7秒間で人生を叩き壊した」最初に語られるこの言葉はこの映画全体の鍵を握る。泣き崩れる彼が、自らの命を絶つというオープニングから、再びそのシーンに帰ってくるラストまで。映画は必要以上の感傷を排除して彼の行為を追いかけていく。抑えたタッチが効果的だ。これは静かな衝撃を与えてくれる映画だ、と言っても嘘ではあるまい。ちょっと出来すぎた話なのは難点だが、大人のメルヘンと言うほど甘いわけではない。どうしようもない現実を前にして、彼に出来たこと。それがきちんと提示できているのがいい。

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