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映画・演劇のレビュー

『強運の持ち主』と1月の小説等

2007-02-13 21:02:32 | その他
 この本のタイトルを人に言うとき、『強運の神さま』とか勝手に言ってた。「今、瀬尾まいこの『強運の神さま』読んでるんだけど、すごく面白いよ」なんて感じだ。すごく恥ずかしい。でも、彼女のデビュー作『図書館の神さま』とごっちゃになってるんだよな。神様なんて言ってしまいたくなるような男の子と暮らす彼女はきっと幸せだろうな、と思わせてくれるそんな作品。彼は『幸福な食卓』の勉学が大人になったような男性だ。

 映画にもなった傑作『幸福な食卓』以降の作品として、これは彼女らしさがほんとによくでた作品。『温室デイズ』と同時期に出版されたが、あちらは辛い作品で、でも、ああいうどうしようもない現実に立ちむかう子供たちの姿は、感動的だった。学校崩壊やいじめの問題に正面から挑みながら逃げない姿勢が気持ちいい。それに対してこちらは、とてもほのぼのしていて、楽に読めてほっとされられる。

 4話からなる連作。幸せってどこにあるのか、を占い師の女の子を主人公にして描く。彼女のぼっとした恋人がとてもいい。一人一人の個性がよく出ていて、それぞれの問題点が、しっかり各話の中で完結していくのも、分かりやすくていい。すっきりして気持ちがいい小説。

 父と母を選ばなくてはならない小学生。義父との関係を上手くいかせたい女子高生。人のおしまいが見える大学生。そして、同棲している強運の持ち主。彼が落ち込んでるのをどう救うか。こんなささやかな出来事が、読んでいていじらしい気分にさせてくれる。1月に読んだ小説で一番好き。

 一月は角田光代の『薄闇シルエット』と、村田喜代子の『鯉浄土』が良かった。前者は『対岸の彼女』の流れを汲む作品で、いつもの彼女の世界だ。37歳という微妙な年齢。恋愛にも仕事にも一歩が踏み出せない。そのもどかしさがリアルだ。後者は初期の『鍋の中』を思い出させる作品集。描かれてあることは、なんでもないはずなのに不思議な世界に見えてしまう。

 ノンフィクションは、金子達仁たちによるドイツワールドカップの日本代表の姿を膨大な人々への取材で検証する『敗因と』が面白かった。

 寺脇研へのインタビュー『格差社会を生き抜く教育』は、僕が昔から好きだった映画評論家である彼とは別の一面が明確になるのは面白いが、なんかえらそうで少し嫌かな。文部省の役人として教育に携わった彼の本音が、現場の人間としてはなんか納得いかない面もあり微妙。

 

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