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映画・演劇のレビュー

『クレヨンしんちゃん 超時空! 嵐を呼ぶオラの花嫁 』

2010-05-16 20:59:14 | 映画
 なんだか、どうしようもなく今回のしんちゃんを見たくなってしまった。「白いウエディングドレスの女性の後ろ姿。彼女に手を引かれ、傷だらけのしんちゃんが振り向く。手には花束を持ちながら。」なんともそそられるポスターではないか、と思った。いつものゴテゴテしたポスターなら、気にも留めないところだが、この白地で余白だらけのシンプルなポスター(チラシ)に誘われて、なんと、10年ぶりくらいで劇場まで『しんちゃん』を見に行く。

 予想は的中した。正直言って、期待通り(というか、期待なんかあまりしてなかったが)の傑作で、わざわざ劇場まで足を運んだかいがあった。(ご多分にもれず、劇場で見たのは『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ! オトナ帝国の逆襲』以来だ!)期待以上に(かなり不安もあったが)よく出来ていてうれしかった。

 今回のしんちゃんは未来に行って自分の花嫁と共に人類の未来を賭けて戦うという『ターミネーター』系である。約20年後の未来は隕石が地球に激突した影響で太陽の光が射さない暗黒の星となっている。ネオトキオと呼ばれる中心地では一部の選ばれた人たちだけが幸せに暮らすが、その周辺は完全にスラム化している。しかも、周辺からネオトキオには行けないようになっている。当然貧富の差が激しい。よくある設定なのだが、そこをいつものメンバーが彷徨い未来の自分たちと遭遇する、という展開はそれなりに楽しめる。

 5歳の少年は『今』のことしか考えない。そんな彼が未来世界を旅して、生きていくことの意味を見出していく。大人になってもしんちゃんは相変わらずおバカで、楽しいことしか考えていない。しんちゃんのパワーが人類の未来を取り戻すという壮大なスケールのお話なのに、その根底にあるのはいつものしんちゃんの世界観だ。今日を楽しまなくては未来はない。本能のままおバカなことをして、みんなを幸せな気分にしてくれる、といういつもの彼のやりかたがここでも継承される。ただ、スペシャル・チョコビが食べたいだけで、人類の未来を守ってしまう。もちろんそこには彼なりのテレもある。だが、それはポーズではなく、彼の本能なのである。自分のわがままという純粋さが、愚かな行為を正当化する。人類の未来よりも、まずは、食べたことのないチョコ・ビなのだ。

 今回、久々にしんちゃんの映画を見て、それが、バランス感覚のいい映画になっていたのが嬉しかった。初期の劇場版は悪ふざけが過ぎてバカバカしいばかりであまり楽しめなかったが、前述の『モーレツ!オトナ帝国の逆襲』前後の秀作(原恵一監督だ!)は大人対象でとても奥深い映画だった。それに引き換え今回の作品はきちんとした子ども目線なのに、大人も楽しめるエンタテインメントになっている。今回の監督は、しぎのあきら。初めてこの人の映画を見たが、趣味のいい仕上がりだ。

 ただし、花嫁を助けるため結婚式場に行くところからラストまでがいささか長い(だから、息切れする)のが、ちょっと気になる。まぁ、ラストのまとめ方は上手いし、とりあえずはこれはこれでよしとしよう。大人になったしんちゃんも、5歳の時のまま大人になっていたのでよかったし。

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