品川ヒロシ監督の新作。昨年の11月に公開されたが全くヒットしなかったから早々にスクリーンから姿を消した映画だ。どうしようかと躊躇しているうちに劇場公開が終わっていて見逃したのだが、早くも配信スタートである。うれしいような、でもなんだかなぁという気もする。Netflixのヒットランキングには入っているけど、劇場では惨敗ってなんだか微妙。映画の出来はいいから余計に残念だ。もちろん自分も映画館では見ていないのだけど。
2時間9分の長尺である。この話でこの長さはギリギリだろう。ただこの漫画世界を忠実に体現するにはそれでもまだ短い。これはディテールを丁寧に見せていかないと成立しないタイプの映画なのだ。お話だけではこの作品世界は描けないからだ。
お話自体はよくあるヤンキーの喧嘩ものである。たわいない話だからストーリーは至ってシンプルだけど、この面白さはお話ゆえではない。個々のキャラクターを活かした彼らの関係性から立ち上がるもの、その中に意味がある。
昔からあるヤクザ映画の定番ストーリーをなぞる。組同士のいざこざからの抗争である。争うのはヤクザではなく不良たちとチンピラヤンキーだが。
刑務所を出所した男がふらっとやって来て対立する組の争いに巻き込まれる。流れ者であり他所者でもある彼は一宿一飯の恩義からラストで敵対する組に相棒とともに殴り込みに行く。そんな高倉健の任侠映画のワンパターンを踏襲する。
前半部分が圧倒的に面白い。次々と登場する濃いキャラクターが楽しい。喧嘩を禁じられた主人公に周囲のヤンキーたちが絡んでくる。敵のボスは不気味で強い。これ以上書くまでもないだろう。パターンだ。見たらいい。
主人公の倉祐貴と相棒になる水上恒司のコンビもいい。(彼らは他の作品でのふたりとはまるで違う!)このふたりを中心にした群像劇になっている。よくあるはずの話を丁寧に見せてくれることで特別なものを提示することになる。作品世界への信頼がこれをありきたりの映画から飛躍させる。それは品川監督だから可能だったことなのだろう。