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映画・演劇のレビュー

第2劇場『なべちち』

2010-01-31 21:02:02 | 演劇
 このいいかげんさには感心させられる。2劇の芝居にはテーマとか、メッセージとか、そんな大層なものはない。ただ状況を楽しむばかりだ。もちろん観客が、ではなく、自分たちが、である。彼らはこう考える。自分たちが楽しかったなら、きっと観客もまた同じように楽しいだろう、と。なんてノーテンキな人たちだろうか。

 この芝居を通して描きたかったことなんかない。ただ、鍋をしたかった。劇場で鍋を囲んだ芝居を作る。それが至上命令だ。そのためには台本が必要だから、仕方なく、書いた、という感じ。まぁ、もちろんそれだけではないです。当然。でも、それが一番大切なことであることは確かだ。「なべちち」とは何なのか、なんて後付けでしかない。みんなで鍋を囲んでいたら楽しい。だから、そんな芝居を作る。そこにはつまらない理屈はない。なんて潔い芝居だろうか。

 役割を変えていく家族の意味、とか、レンタル家族の話とか、主人公のひかりくんは何をしたのか、とか。謎の2人組(KとJ)が、何者なのか、とか。(まぁ、彼らはKとJで刑事です!)いつものことだが、アイデアはすばらしいし、それに深い意味を与えることは簡単にできるはずだが、そんなややこしいことはしない。

 観客に考えるいとまを与えない。というか、考えるだけバカバカしいと思わせてしまう。それって凄くないか。ここまで脱力させられる芝居はない。あっぱれだ。

 できないから、こういう芝居を作るのなら、つまらない、と思う。だが、いくらでも深遠なテーマとかで見せることだって可能なのに、へ理屈は一切言わないところが、この劇団の方向性だ。阿部さんと音間さんのコンビは今回も絶好調である。

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