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映画・演劇のレビュー

『一週間フレンズ。』

2017-02-25 01:17:54 | 映画
今年は空前絶後の「キラキラ青春映画」ブームだ。続々と(なんとこの時期、毎週1本のペースで新作が登場する始末だ!)同じような高校生の恋愛ものが登場してくる。(高校生だけではなく、大人も主人公として登場するものもあるけどあくまでも中心は高校生だ。)このジャンルの巨匠、三木孝浩や廣木隆一も(もちろん)作るけど、あまりの量にその対応は難しい。(対応?
まぁ、それって、僕が作るのではなく、僕はただ見るだけだけど、それでもたいへんだ、という話である。)彼らが作れるのはせいぜい1年1本くらいだ。自然といろんな監督に話は舞い込む。



その結果、そこから生まれる映画は当然傑作ばかりではないだろう。つまらない映画も含まれる。そんなこと、わかっているけど、ついつい期待してどんどん見てしまう。ここ数年ハズレが少ないというのもあるけど、この飽和状態では先は思いやられる。そんな時に登場したのがこの映画だ。これはとても残念な映画である。奇抜な設定をうまくいかせると新たなる可能性がそこには広がったはずなのだ。



「学園もの」に期待してしまうのは、僕がこのジャンルを好きだからだ。仕事で高校生の相手をしているから、遊びである映画でまで高校生を見たくない、という人もいるはずだし、映画で描かれる不自然な高校生たちに辟易する人も多いだろうが、そこでキラキラしてる高校生に教えられることも多い。というか、いろんなことを教えられ、新鮮な感動があるから、ついつい見てしまうのだ。ここにはある種の理想が描かれる。ありえないことも多々ある。でも、そんなありえないことを受け入れたくなる映画が好きだ。そういうこともあるのか、という可能性を教えられるからだ。



だが、その反対もある。今年は量が多いだけに、がっかりの度合いも高そうだ。今回のこの映画がそれを教えてくれる。久々にここまでつまらない映画を見た。最初から、まずいな、とは思ったけど、それでもそのうちなんだかの考えでこうしているはずだから、きっとすごい展開がある、と期待した僕がバカだった。最後までただのゆる~い話で、説得力の欠片もないような少女マンガだった。(ここでいう「少女マンガ」というのは、中身のない形骸化したもの、というものね)



ないわぁ、を連発しているうちに2時間が過ぎていった。見ているぶんには、まぁ、見れないわけではないけど、こんな絵空事をつらつらと見せられても、まるで納得はいかない。基本設定は嘘でもいいけど、細部はちゃんとしなくては、バランスが取れないし、作品に乗れない。だから結局取り残されていくことになる。高2の春から卒業までの2年間を描く2時間は、時系列に順を追って描かれる。でも、そこにはなんら成長はない。1週間で記憶を失う少女を好きになった男の子の精一杯の頑張りが描かれるのだが、報われない。でもそういうストーリー自体は別に悪くはないと思うのだ。要は見せ方なのである。



高校生活を彩るいくつものイベントを背景にして、切ない想いが綴られる。山﨑賢人はバカな男の子を誠実に演じたけど、台本と演出があまりに凡庸。これでは彼の内面の成長のドラマが伝わってこない。川口春奈も、木偶の坊でしかない。彼女の抱える痛みは表層的にしか描かれない。これでは見ていて主役のふたりがなんだか可哀そうになった。
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