この小説を読んでようやく『教団X』を読む覚悟が出来た。あの大部の書を持ち運ぶのがきついからなかなか踏ん切りがつかないまま、2年は経つ。分冊にしてくれていたならすぐに読み始めたけど、600ページに及ぶ本を数日間とはいえ、カバンの中に入れて歩くのはつらいと、二の足を踏んだまま歳月が過ぎていたのだ。
今回たまたま読み本がなくて、文庫で新刊コーナーに置かれていたからこの本を手にした。(2013年初版刊行なのに、某図書館には今頃新入荷していた)読み始めてあまりの面白さに、手が止まらなかった。一気に読んでしまった。(いつものように電車の中が読書の中心なので、2日だけど)これを読んだ以上次は『教団X』しかない、と思う次第だ。
ここに描かれるのは、絶対的な悪について、である。前半は邪な人間に育てようとする父と息子の対決をメインにした。後半は、父の跡を継ぐ兄(父とそっくりで、邪悪の塊のような怪物)との対決だ。ふたりが相対するクライマックスは圧巻である。『地獄の黙示録』を思わせる。(1月に見た映画『沈黙』でもそんなことを書いたなぁ)
「邪の家系」に生まれた男が大切な少女を守るため、14歳で父を殺し、やがては彼女のストーカーと化していく。父は戦争のために暗躍する武器商人だった。彼はテロ組織の援助をし、危機感を煽る。悪の権化である財閥の頭首なんていう設定なのだが、荒唐無稽にはならない。とてもリアルで説得力のある作品として、最後まで読ませる。
父が幼い不義の息子に邪な心を育てるところから始まる。過去と現在を往還して、13,4歳の彼と、それから10数年後の現在の彼ら描く。個人的な想いを描くにもかかわらず、スケールが大きい。この世界がどうなっているのか、というお話が背後にちゃんとあるから、ここまでドキドキさせられるのだろう。中村文則の犯罪小説はいつもそうだ。世界観の提示が素晴らしいから、お話自体がどんな個人的なものでも小さな世界に収まらなくなる。
今回たまたま読み本がなくて、文庫で新刊コーナーに置かれていたからこの本を手にした。(2013年初版刊行なのに、某図書館には今頃新入荷していた)読み始めてあまりの面白さに、手が止まらなかった。一気に読んでしまった。(いつものように電車の中が読書の中心なので、2日だけど)これを読んだ以上次は『教団X』しかない、と思う次第だ。
ここに描かれるのは、絶対的な悪について、である。前半は邪な人間に育てようとする父と息子の対決をメインにした。後半は、父の跡を継ぐ兄(父とそっくりで、邪悪の塊のような怪物)との対決だ。ふたりが相対するクライマックスは圧巻である。『地獄の黙示録』を思わせる。(1月に見た映画『沈黙』でもそんなことを書いたなぁ)
「邪の家系」に生まれた男が大切な少女を守るため、14歳で父を殺し、やがては彼女のストーカーと化していく。父は戦争のために暗躍する武器商人だった。彼はテロ組織の援助をし、危機感を煽る。悪の権化である財閥の頭首なんていう設定なのだが、荒唐無稽にはならない。とてもリアルで説得力のある作品として、最後まで読ませる。
父が幼い不義の息子に邪な心を育てるところから始まる。過去と現在を往還して、13,4歳の彼と、それから10数年後の現在の彼ら描く。個人的な想いを描くにもかかわらず、スケールが大きい。この世界がどうなっているのか、というお話が背後にちゃんとあるから、ここまでドキドキさせられるのだろう。中村文則の犯罪小説はいつもそうだ。世界観の提示が素晴らしいから、お話自体がどんな個人的なものでも小さな世界に収まらなくなる。