昨年見た演劇作品は143本。本数はここ10年どんどん減少していると思ったが、それほどでもない。ただ、新しい劇団はあまり見ることがなくなった。最近は、呼んで貰わなくては自分から見に行くことがないからだ。(それに、知らない劇団から、見に来て欲しいなんて、なかなか言われなくなったからね)春の演劇まつりとか、キャンパスカップで出会う従来なら見ることのない集団の作品も、減少しているし。そんなこんなで、あまり芝居を見ていない。
だが、こうして振り返ると、本数のわりには、面白い作品が多くて、ベストテンを選ぶのは苦労する。簡単にリストアップしても面白い作品は4,50本軽くある。最初からはずれは見ないからだ。12月のベスト2である『ゆうまぐれ、龍のひげ』ですら、1年通してのベスト20から漏れてしまった。それくらい秀作ぞろい。昨年まではここに30本を並べていたが、今年からは厳選して10本だけをリストアップする。30本選ぶとどうしても選外になった作品への未練ばかりが残って、選んだ30本と並べても遜色ないものが漏れまくっていて、本当にすまない、という気分になるからだ。でも10本なら、どんどんいい作品を落としているから、気にしなくて済む。ベストテンなんて、ちょっとしたお遊びなのだと、割り切ってしまおう。
昨年見せてもらった素敵な作品に感謝しながら、とりあえず、10本。
1位 KUTOー10『楽園!』
2位 太陽族 『それからの遠い国』
3位 青年団 『月の岬』
4位 箱庭円舞曲『どうしても地味』
5位 突劇金魚『蛇口からアイスクリーム』
6位 テノヒラサイズ『泥の子と狭い家の物語』
7位 ショウダウン『ウインドミルバレー 最後の三日間』
8位 ジャブジャブサーキット 『死ぬための友達』
9位 からまわりえっちゃん 『激情版 1,2,3ショットマンレイ②』
10位 第2劇場 『かなこるむ』
かなり思い切った選択をした。敢えて遊劇体も、桃園会も、Mayも、はずした。もちろんつまらなかったのではない。毎年同じ劇団の新作ばかりがベストテンに並ぶのを避けたからだ。今年も、ではなく、今年は、という作品を10本選ぶことにした。それくらいに傑作が多かったからだ。今年の1月にも再演される桃園会の『blue film』の完成度の高さなんて、誰もが認めるところだろう。あの作品を1位にしてもなんら異存はない。でも、敢えてしない、ということだ。それが今回のベストテンである。だが、ここに並んだ10本の質の高さ、志の高さは『blue film』にひけをとらない。
1位の『楽園』はサリngさんが新境地を開いた傑作だ。しかも、それは演出の山口茜さんの力である。そして、こんなコンビで芝居を作ろうとした工藤俊作さんのプロデューサーとしての才覚は今年のベストとして、自信を持って推せる。しかも、彼は、12月に再び、思いもしない組み合わせでもう1本作っている。樋口ミユさんと岩崎さんにタッグを組ませるなんていう離れ業で、『血、きってみる』というもうひとつの傑作をものにしている。昨年の工藤さんは絶好調だった。
2位はその岩崎さんの渾身の力作。これだけはベストテンから外せなかった。これは2012年に作られたことに意義がある。だから、僕のベストテンの定番である太陽族だけど、胸を張ってランクインさせた。オウムを描いた『そこからは遠い国』の続編である。今、もう一度あの事件を描く。もちろん誰もあの事件を忘れたわけではない。だが、今、ここであのことに触れずにはいられない。岩崎さんの熱い想いを支持する。
3位も本来ならありえない。でも、久々に見た『月の岬』の新鮮さに心打たれた。もうこれは古典だ、と思った。再演であること以上に、こんなにも瑞々しい作品であったことの驚きゆえ、2012年を象徴する作品として、上位に記した。再演でやはり傑作だった、なんていう作品は枚挙に暇がない。秀作だから再演される。時代を経ても古くならないから、今また上演される。そんな当たり前のことを、この作品は超越する。しかも、全く変わらない。演出を変えたとか、キャスティングを大胆に変えたとか、そんなことは、一切ない。
4位は、東京の劇団だが、これは凄いと思った。作り込まれたセットもそうだが、細部の隅々にまで行きとどいた演出がこんなにも、心地よい。痒いところに手が届くって、快感だという当然のことを思い知らされた。
5位は『夏の残骸』ではない。『蛇口からアイスクリーム』である。ここにも僕の作為的な選択がある。大体定番を外すのなら、突劇金魚もやめるべきだった。しかも、敢えて選ぶなら大作『夏の残骸』を選ぶべきだ、と見た人ならみんな言うだろう。でも、僕は断然こちらを推す。短編版『夏の残骸』の残骸の前では大作『夏の残骸』は空虚なものにしか、映らない。そこまで、言い切ろう。サリngさんは、この2本の『夏の残骸』を通して、(もちろん『楽園』も、だが)明らかに新たなステージにステップアップした。2012は、その記念の年だ。
6位、9位、10位の3作は演劇の面白さに満ち溢れている。芝居が一番力を持つのはこういう作品に於いてである。そのことを、中堅、若手、ベテランの3人がそれぞれ教えてくれたのだ。今、思い返すだけで幸せな気分にさせられる秀作揃いである。
8位はごめんなさい、である。言ってることと矛盾するけど、やはり入れてしまった。はせさんの作品を外してベストテンなんか、作りたくない! もちろん、深津さんやキタモトさんの作品も外したくはないけど、そんなことしたら、また今年のベストテンもいつもと同じになるから、と思いつつ、でも、はせさんひとりくらい紛れさせても罪はないだろ、と勝手に納得する。
そして、最後である。12月の末に滑りこみで見た林遊民の一人芝居『ウインドミルバレー 最後の三日間』。今年のショウダウンの快進撃は、彼女の快進撃でもある。その最後を飾るこの作品で、頂点を極めた。2012年最優秀女優賞も彼女に献上したい。
だが、こうして振り返ると、本数のわりには、面白い作品が多くて、ベストテンを選ぶのは苦労する。簡単にリストアップしても面白い作品は4,50本軽くある。最初からはずれは見ないからだ。12月のベスト2である『ゆうまぐれ、龍のひげ』ですら、1年通してのベスト20から漏れてしまった。それくらい秀作ぞろい。昨年まではここに30本を並べていたが、今年からは厳選して10本だけをリストアップする。30本選ぶとどうしても選外になった作品への未練ばかりが残って、選んだ30本と並べても遜色ないものが漏れまくっていて、本当にすまない、という気分になるからだ。でも10本なら、どんどんいい作品を落としているから、気にしなくて済む。ベストテンなんて、ちょっとしたお遊びなのだと、割り切ってしまおう。
昨年見せてもらった素敵な作品に感謝しながら、とりあえず、10本。
1位 KUTOー10『楽園!』
2位 太陽族 『それからの遠い国』
3位 青年団 『月の岬』
4位 箱庭円舞曲『どうしても地味』
5位 突劇金魚『蛇口からアイスクリーム』
6位 テノヒラサイズ『泥の子と狭い家の物語』
7位 ショウダウン『ウインドミルバレー 最後の三日間』
8位 ジャブジャブサーキット 『死ぬための友達』
9位 からまわりえっちゃん 『激情版 1,2,3ショットマンレイ②』
10位 第2劇場 『かなこるむ』
かなり思い切った選択をした。敢えて遊劇体も、桃園会も、Mayも、はずした。もちろんつまらなかったのではない。毎年同じ劇団の新作ばかりがベストテンに並ぶのを避けたからだ。今年も、ではなく、今年は、という作品を10本選ぶことにした。それくらいに傑作が多かったからだ。今年の1月にも再演される桃園会の『blue film』の完成度の高さなんて、誰もが認めるところだろう。あの作品を1位にしてもなんら異存はない。でも、敢えてしない、ということだ。それが今回のベストテンである。だが、ここに並んだ10本の質の高さ、志の高さは『blue film』にひけをとらない。
1位の『楽園』はサリngさんが新境地を開いた傑作だ。しかも、それは演出の山口茜さんの力である。そして、こんなコンビで芝居を作ろうとした工藤俊作さんのプロデューサーとしての才覚は今年のベストとして、自信を持って推せる。しかも、彼は、12月に再び、思いもしない組み合わせでもう1本作っている。樋口ミユさんと岩崎さんにタッグを組ませるなんていう離れ業で、『血、きってみる』というもうひとつの傑作をものにしている。昨年の工藤さんは絶好調だった。
2位はその岩崎さんの渾身の力作。これだけはベストテンから外せなかった。これは2012年に作られたことに意義がある。だから、僕のベストテンの定番である太陽族だけど、胸を張ってランクインさせた。オウムを描いた『そこからは遠い国』の続編である。今、もう一度あの事件を描く。もちろん誰もあの事件を忘れたわけではない。だが、今、ここであのことに触れずにはいられない。岩崎さんの熱い想いを支持する。
3位も本来ならありえない。でも、久々に見た『月の岬』の新鮮さに心打たれた。もうこれは古典だ、と思った。再演であること以上に、こんなにも瑞々しい作品であったことの驚きゆえ、2012年を象徴する作品として、上位に記した。再演でやはり傑作だった、なんていう作品は枚挙に暇がない。秀作だから再演される。時代を経ても古くならないから、今また上演される。そんな当たり前のことを、この作品は超越する。しかも、全く変わらない。演出を変えたとか、キャスティングを大胆に変えたとか、そんなことは、一切ない。
4位は、東京の劇団だが、これは凄いと思った。作り込まれたセットもそうだが、細部の隅々にまで行きとどいた演出がこんなにも、心地よい。痒いところに手が届くって、快感だという当然のことを思い知らされた。
5位は『夏の残骸』ではない。『蛇口からアイスクリーム』である。ここにも僕の作為的な選択がある。大体定番を外すのなら、突劇金魚もやめるべきだった。しかも、敢えて選ぶなら大作『夏の残骸』を選ぶべきだ、と見た人ならみんな言うだろう。でも、僕は断然こちらを推す。短編版『夏の残骸』の残骸の前では大作『夏の残骸』は空虚なものにしか、映らない。そこまで、言い切ろう。サリngさんは、この2本の『夏の残骸』を通して、(もちろん『楽園』も、だが)明らかに新たなステージにステップアップした。2012は、その記念の年だ。
6位、9位、10位の3作は演劇の面白さに満ち溢れている。芝居が一番力を持つのはこういう作品に於いてである。そのことを、中堅、若手、ベテランの3人がそれぞれ教えてくれたのだ。今、思い返すだけで幸せな気分にさせられる秀作揃いである。
8位はごめんなさい、である。言ってることと矛盾するけど、やはり入れてしまった。はせさんの作品を外してベストテンなんか、作りたくない! もちろん、深津さんやキタモトさんの作品も外したくはないけど、そんなことしたら、また今年のベストテンもいつもと同じになるから、と思いつつ、でも、はせさんひとりくらい紛れさせても罪はないだろ、と勝手に納得する。
そして、最後である。12月の末に滑りこみで見た林遊民の一人芝居『ウインドミルバレー 最後の三日間』。今年のショウダウンの快進撃は、彼女の快進撃でもある。その最後を飾るこの作品で、頂点を極めた。2012年最優秀女優賞も彼女に献上したい。