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映画・演劇のレビュー

『相棒』

2008-05-24 22:50:23 | 映画
 和泉聖治がほんとうに久々にスクリーンに戻ってきた。もう10年近く彼は映画から離れていたのではないか。ピンク映画からキャリアをスタートさせて、忘れもしない。1982年、『オン・ザ・ロード』で一般映画に進出。この映画は、当時、大林宣彦監督の記念碑的作品『転校生』と2本立で松竹系で公開された。今は亡き香里ミリオンまで、見に行ったことをはっきり覚えている。

 あんなにも感動したことはなかった。2本が2本ともまるで傾向が違うのに日本映画の新しい歴史を刻む傑作だった。この作品を皮切りとして和泉聖治の快進撃は始まる。『沙耶のいる透視図』、『あの胸のときめきを』、『さらば愛しのヤクザ』等々。枚挙の暇もない。数々のアクション映画、青春映画で彼は一時代を築いた。だが、いつのまにか、時代は動き彼のような職人監督には仕事がまわらなくなる。彼は活動の場をTVに移す。そして、この『相棒』シリーズを作り続けた。

 あれから、7年の歳月が経った。『相棒』が映画化される。当然その仕事は彼に任された。満を持してのスクリーン復帰である。安易なTVシリーズの劇場版になるはずがない。とはいえ、実は僕はこのドラマを見たことがない。(基本的にはTVドラマは見ない人だから)でも、この地味な企画が長年支持されてきたのにはきっと理由があるのだろう。

 これは、水谷豊の25年振りの映画復帰作でもある。『青春の殺人者』1本で映画スターとして歴史に名を残した彼が『幸福』『逃れの町』以来の映画に挑む。なんだか、それって凄くないか。

 そして、映画は爆発的な大ヒットとなった。封切りから3週以上が過ぎた平日の朝一番なのに満席状態だったのには驚いた。いったいどこからこんなに人が湧いて来るのか、と思うくらいの盛況振りだった。正直びびった。あやうく入れないところだった。

 内容については、正直言って何も語ることはない。スケールの大きな作品で、よく考えられてある。しかし、映画としてこれを評価する気にはならない。僕はつまらなかったが、満足した人がたくさんいたのならそれは喜ばしいことだと思う。

 かって、和泉聖治が胸のすくようなアクションや青春映画を撮っていた時代が懐かしい。斜陽の映画界にあってプログラム・ピクチャーの傑作を量産していた。そんな時代が確かにあったのだ。

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