たった3週間で上映が打ち切りになるみたいだ。これだけの大作で、大変な思いをして作った入魂の一作なのに、情け容赦ない。改めて興業って難しいと思う。なんだか、とても悔しい。今、当たり外れは極端だ。昔からそうだったけど、大切に作った映画が、なかなか観客のところまで届かない。宣伝がいい加減なのではない。選択肢が多すぎて、そこから零れていくのだ。もちろん、どうしても見たいと願う人は、ちゃんと見てる。でも、それだけではヒットにはつながらない。
阪本順治監督による渾身の力作である。キューバ革命後、故国であるボリビアからひとりの日系人がキューバ大学にやってきて医師を目指す。キューバ危機を経て、ボリビアの軍事クーデターから、やがてその内乱に身を挺して、若くして死んでいくまでを描く。
自分たちの国を守るため、平和のために戦い死んでいくって、何なのか。銃なんかではなく、医師としてメスを持ち、戦うことも出来たはずなのに、なぜ銃を持たなくてはならなかったのか。彼の中にある切実な想いが戦場へと彼を駆り立てる。映画は冒頭主人公が登場する前に、チェが日本を訪問するエピソードがある。広島で原爆ドーム、慰霊碑、記念館を訪問し、日本人はなぜ、アメリカに怒らないのか、というチェ・ゲバラ。キューバ危機を通して、キューバがアメリカと戦い、勝利を勝ち取るドラマの後、フレディ前村による本編が本格的にスタートする。
日系人である彼にとって祖国は日本ではなく、ボリビアだ。彼は家族や同胞を守るため、文字通り、命を賭けて戦うことになる。たったひとりの力なんてしれている。何が出来るわけでもない。しかし、1人が立ち上がらなくては、誰もそこに続かない。映画はそんな彼のある意味わがままな決意とその実行を追いかける。何のため生まれてきて、何をして生きるのか、アンパンマンじゃなおけど、誰もが常に自分に対してそんなふうに問いかける。一瞬一瞬の選択判断が人生を作っていく。自分が信じたものを全うするしかない。それが正しいか、誤りか、なんて、死んでしまってもわからない。
全編スペイン語のオダギリジョーが素晴らしい。映画は彼が日系人であることにはこだわらないのも凄い。たまたま、というくらいのこととして描かれるが、その背後にある様々な思いを想像させられる。