いつも刺激的な映画を見せてくれる池田千尋監督のこの新作は対照的なふたりの女性が主人公。なんと起業をテーマに据えたドラマだ。こんな題材が映画になるなんてそれだけでまず驚きだ。上白石萌音と山崎紘菜が主演する。
こんな地味な映画がなんと東宝系で(そりゃぁ、ふたりは東宝シンデレラだ!)公開される。だから、きっとすぐに公開が終わると思うので、初日に見に行く。1日3回上映の夜の回なのに、やはりガラガラだった。脚本が高橋泉。期待は高まる。
まずエキセントリックな上白石萌音に驚く。というか、ちょっとひいてしまう。山崎紘菜はいつも通り。受けの芝居になる。今という時代の気分を描いてくれたならいいのだけど、なんだか中途半端。池田監督が彼女たちの生き方をどう切り取るのか、楽しみにしていただけに、これではなんだかモヤモヤした気分にさせられる。20代の女性たちの仕事に対する想い。将来への不安。というよりも、今をどう生きていこうとするのか。それを起業という観点から描こうとする。切り口は斬新だけど、それがまるで生きてこない。それどころか、それゆえ、映画が嘘くさくなる。何がしたかったのかすら見えなくなる始末だ。積極的に自分の未来を切り開いていこうとする女の子たちを応援する映画にならなくては意味がない。だが、それがこの起業という切り口からは見えてこない。
これではまるでリアルじゃないのだ。せっかく恋愛は一切挟まないという大胆な映画を作ったのに、世界がこんなにも広がらない映画にしたのはなぜだ。93分という異様に短い上映時間もこの内容なら仕方あるまい。何か別のものを作るつもりだったのに、諸事情からこんなものにさせられた、そんな気にさせられる。見る側は当然だが、きっと作り手に取っても不本意な映画なのだろう。どうしてこんなことになったのか、事の顛末が知りたい。