これで4回目となる能と現代演劇(小劇場演劇)とのコラボレーション。今回は「巴」を取り上げた。これは同時に、岡部尚子と林慎一郎という異色の才能のコラボでもある。ふたりが台本を書き、岡部主演、林演出で贈る。全く接点を感じさせない異なる個性を持つふたりが役割分担をきちんとして、がっちりとタッグを組んで、「能」を題材にした作品に挑む。能を取り込みながら、自分たちの芝居を目指すというスタンスが、これまでもの何回かの経験を踏まえて成されており、作品自体はとてもバランスよく仕上がった。
BK1という格闘技を巡る物語が、能の「巴」とどうつながっていくのか。最初はその意外性に戸惑うけど、そこも作り手側の意図通り。「あれっ?」って、思わせといて、ラストでは納得。ちょっと昔のつかこうへい芝居みたいなテイストで、能舞台をリングに見立てる展開もおもしろい。さすがに本格的なファイトシーンはないけど、それに近いシーンは用意されてある。
K1ではなく、BK1。「B」が付く。B級グルメならぬB級格闘技という設定がもの悲しい。そこでふざけて笑わせるのではないのもいい。リングを去った男と、彼を慕う3人の女たちという「巴」を踏まえた展開もきれいに嵌まった。笑わせながら切なくなるといういつもの岡部テイストを職人に徹して林演出がしっかりとサポートする。そこにオリジナルの能を挿入して、きっちり70分にまとめあげる。理想のworkを実現させる。