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映画・演劇のレビュー

金蘭会高校演劇部『イントレランスの祭』

2017-03-28 19:59:03 | 演劇

 

久々の金蘭エンゲキである。いつもながら素晴らしい。もう今では古い話で恐縮だが、一時期は部員が少なくなり、従来のスタイルでの作品作りが難しくなっていた時期もあった。でも、今ではそんなことを忘れさせるくらいに安定したメンバーで、完成度の高い作品を作り続けている。毎年この時期ホームグランドであるウイステリアホールで3年生の卒業公演と12年による新作が上演されるのだが、今年はそれに金蘭座の新作までもが上演された。33週間連続で3作品の公演をこなすことになったのだ。32週目の卒業公演は見逃したけど、在校生によるこの作品はなんとか見ることができてうれしい

 

。安定したメンバーで以前のパターンを取り戻し、同時にさらに深化発展させる意欲的な作品作りに挑んでいる。

 

金蘭の芝居を見ると、それだけで元気になれる。芝居を見ていてよかった! という充実感が溢れている。作品の完成度云々ではない。(もちろん、高校生離れした完成度の高さだ、なんてことを今更ここで書く必要はない)彼女たちの芝居にかける情熱が確実に伝わってくるからだ。それだけで、もう胸がいっぱいになる。今、自分たちは戦力で芝居をしている。今しかできないことのために生きている。そんな想いがそこからは溢れすぎて零れてくる。勿体ないから両手で思わず受け止めてしまう。

 

代が変わってもそんな金蘭スピリットは受け継がれていく。今回のそうだった。昔ながらの人海戦術スペクタクルで、鴻上尚史のよくできた戯曲を自分たちの世界観の中で立ち上げる。とてもわかりやすい内容で、ストレートの表現できる戯曲を得て、それを金蘭メソッドで無理なく自分たちの世界として表現した。

 

地球に移住してきた宇宙人とそれを受け入れた地球人(というか、ここではピンポイントで日本人)との確執を描くのだが、ここに描かれる寓意はとてもシンプルなのに奥が深い。わかりやすいストーリーながら、それを力業でぐいぐい見せていく。お話の核心に向けて一直線にねじ込まれていく。高校生だからこそ、差別に対する素直な想いが表現できる。それぞれの中の複雑な想いも秘めながら分かり合えないという困難と正面から向き合い答えを出そうとする。とても感動的な作品だった。


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